『創文』から

 『創文』 季刊 2016 春 No.21(創文社)が届きました。
 出版・書店では、PR誌を刊行しているところが少なくないが、『創文』は創文社刊行の季刊紙である。創文社は学術図書の出版で定評のある出版社であり、この『創文』も、読み応えのあるエッセイなどが掲載される。本ブログでは、あまり取り上げることがなかったが、今回は、いくつかのエッセイを紹介したい。

・安藤康弘:「一八世紀フランスの「政治経済学」──その来歴とその後の展開」
 現在の経済学が、その形成期において、政治経済学と呼ばれていた点はしばしば指摘されることであり、イギリスの文脈では、政治経済学から経済学への移行が思想的問題になる。それは、フランスではどのような思想的状況が展開されたのかを知る上で、興味深い論考である。
「「政治経済学」から「社会技術」(あるいは「社会科学」)に至る一八世紀フランス知性史の水脈と、革命期にまで及んだフィジオクラットの思想的影響」は、19世紀的近代の思想形成を分析する上で、重要な視点となるだろう。

・秋富克哉:書評「ハイデガーと共に歩まれる「野の道」──景山洋平『出来事と自己変容─ハイデガー哲学の構造と生成における自己性の問題─』」
 日本において、コンスタントに出版されるハイデガー研究書の最近の一冊に対する秋富さんの書評である。ハイデガー研究者相互において、専門研究のレベルでの書評が可能であることは、日本のハイデガー研究の層の厚さを示しているように思われる。
 「出来事」は、ハイデガーに限らず、20世紀の哲学思想において、重要なキーワードである。ハイデガーに限定されない、より広範な文脈での議論を行うとどうなるだろうか。この点も、興味は尽きない。なお、秋富さんとは、しばしばご一緒することがある。

 「出版案内」の新刊の最初に、薗田坦先生の『無底と意志-形而上学』が掲載されている。薗田先生のこの著書は、先生から寄贈いただき、本ブログでも紹介したものである。薗田先生は、わたくしが個人的にはお世話になった方であるが、先月下旬に逝去された。改めて、ご冥福をお祈りしたい。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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