南原繁演習より3

 南原繁の『国家と宗教』(岩波文庫)の「第一章 プラトン復興」「三 神話の解釈」(5月9日・演習)について、概要をまとめておきます。

 この「三」は、「二 新プラトン像の性格」におけるゲオルゲ派のプラトン研究の動向分析を受けて、それに対する批判的解釈が行われます。
 もちろんゲオルゲ派のプラトン解釈については、一つの節で取り上げたわけですから、南原がそれに注目しており、さらには、一定の評価・共感をもっていることは否定できないと思われます。しかし、「三」で、南原のゲオルゲ派に対する立場は、明確になります。それは、次の「四」における「プラトンにおける意義は反って他に存する」(50)という見解に端的に示されている通りです。確かに、プラトン哲学の核心に政治・国家の問題は位置している、しかし、それは、「哲学」であって、「神話」ではない、という主張です。
 それに先だって、この「三」では、ゲオルグ派のプラトン理解の思想的背景についての考察が行われ、それが思想的に何であるかの解明がなされます。キーワードは、「神話」であり、ゲオルグ派が象徴する現代とは、「神話」の時代である(40)、というのが、南原の現代分析であり、それは、19世紀に遡ることになります。

「神話をもって哲学的思惟の根底に置こうとする」、「時代が忘却して来た古い世界を開示して生の深淵を覗かしめる」「建国の神話に立ち還り」
「プラトンにおける神話的要素の高調」には「ルネッサンス的ロマン主義の精神」が認められる。
「神話は」「国民の古の信仰」であるが、「単なる過去に属することではなくして、未来にかかわる国民の理想的契機を含む」(41)

 それは、「前科学的な、学問構成のための原体験に属する世界」であるが、「努力の標的として人類の到達すべき永遠の住家ではあり得ない」「決して絶対永遠の範型としてのわれわれの思想の境位ではない」と、南原は考える。

 特定の時代(古の時代)の神聖化に対して、南原は、すべての時代は「おのおの固有の価値をもつ」、「これらの時代がおのおの特有の世界を展開し、それぞれの固有の価値を有することが認められねばならぬ」(43)と主張する。
 特定の過去の時代を聖化し、それを現代と未来の規範的位置に高める思考については、「その保守的・反動的傾向は覆うべくもない」、それは「国民の本源的国家生活としての生の共同体の理想」であり、「現代ドイツのナチス等」(43)に通底するものである。
 ここで、南原の現代理解が明らかになる。19世紀の実証主義的動向などへの反動として広範に保守的傾向が時代の動向になりつつある中に、ゲオルゲ派もナチスもそれに属しているということである。
 この現代論が、1942年の日本においてなされたこと、ここに注目しなければならないであろう。

「全体国家」「国家権力者の把握するカリスマ的権威と、これに対する国民の側からの信仰の関係」
「知的直観と宗教的神秘の貴族主義」「現代の「独裁政治」の理論」「政治的非合理性に神秘的非合理性が結合して主張」
「あらゆる人間生活が国家のうちに吸収される」(45)

 南原も「近代国家が多くの欠陥と誤謬を内包する」ことを認めるとしても、「以上のような国家観をもってこれに代えることは不可能であるのみならず、そのこと自体大なる危険を包蔵するものである」と結論する。

 以上がゲオルゲ派のプラトン像についての南原の解釈であるが、「三」の最後に、南原は、ゲオルゲ派の主張がニーチェと共通性を持つ点を指摘する。
「新しいプラトン学者が、いずれおもつとめてニイチェに範を求め、彼を擁護するのは決して偶然ではない」、「彼らはいま彼らのプラトン像によって、近代精神の克服と時代の転換を目ざすのである」(48)。
「「学」に対する嫌悪、「知識」に対する蔑視の態度」「ロマン的な生の非合理性の要求とその神話主義」
「ドイツ・ナチスの徒がニイチェに呼びかけるのも」(49)
「現代におけるニイチェ復興と同時に、プラトン復興」「前者の精神をもってする後者の理解の高調」(50)

 以上が、南原の現代理解であり、この現代に対して、「しかるに、単に「詩話的」な本源的統一、生の全体的共同体思想をもってすることは、決して問題の解決ではない」というのが、南原の主張である。
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