近代日本の知の形成と留学

 留学。これは、古代から日本における知の形成にとって、大きな役割を果たしてきたものであり、現代も同様であり、何よりも、近代日本の知の形成にとっては決定的な意味をもってきた(古代においては中国、近代は欧米)。留学という営みなしに、日本における知の展開は困難であったと言わざるを得ない。大学院で学び、将来研究職を志す学生にとって、留学は現実的な選択肢の一つであり、どのタイミングでどこに留学するかは大きな問題となる。(わたくしは、こうした選択肢を考えつつも、事情によって、「留学」することなく、現在を迎えているが、まわりには留学を経験した先輩後輩、同僚友人が多く存在する。)
 こうした留学という問題を近代以降の文脈で具体的に考える上で、ユニークかつ優れた文献が出版された(本ブログのカテゴリでもピッタリのものがないので、「雑感」での紹介となる)。著者は留学経験豊かな方であり、留学後、思想研究者として現在も優れた研究を公にし続けている。

安酸敏眞
『欧米留学の原風景──福澤諭吉から鶴見俊輔へ』
知泉書館、2016年。

プロローグ

第一話 福澤諭吉ち西周
第二話 森有礼と新島襄
第三話 日本初の女子留学生──山川(大山)捨松、永井(瓜生)繁子、津田梅子
第四話 北海トリオ──内村鑑三、新渡戸稲造、宮部金吾
第五話 北里柴三郎と森鷗外
第六話 芳賀矢一と夏目漱石
第七話 有島武郎と寺田寅彦
第八話 原勝郎と西田直二郎
第九話 波多野精一と石原謙
第十話 村尾典嗣と阿部次郎
第十一話 九鬼周造と三木清
第十二話 有賀鐵太郎と郷司浩平
第十三話 武田清子と鶴見俊輔

エピローグ

あとがき

参考文献
索引

 著者ならではの内容である。トリオ二組を入れて、全体は「ドッペル・ポートレート」で構成するなど、読者に読ませる工夫がなされ、人物紹介にとどまらない、魅力的な内容である。近代日本キリスト教思想の形成という観点からも、きわめて興味深い(近代日本の知の形成にとって、キリスト教は決して小さな存在ではなかった)。
 著者が、こうした近代思想の提示を試みていることの背景には、「プロローグ」などで語られる、現在、日本の大学を席巻しているグローバル化議論が存在する。大学における知の問題を問う批判的な眼差しが、本書を通底しているとも言える。
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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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