南原繁演習より5

 南原演習も、『国家と宗教』の第2章「キリスト教の「神の国」とプラトンの理想国家」に入りました。「一 プラトン理想国家の問題史的意義」(5月23日)です。
 この部分は、第1章の議論を振り返り、第2章の議論へと接続するという位置づけになり、これまでの議論と重なった内容が多く見られます。

 新しい内容としては、次の2点。

・プラトンの有名な「洞窟の比喩」からプラトンの教育国家論を読み取る。
「光明の世界において真の知見を体得した者は、洞窟のごとき暗黒の世界に住んでいる同胞のあいだにふたたび降りて来て、正義のために戦い、さらに民衆に自己とを同じ超絶界の高い理想にまで連れてゆく使命を持っている。」(72-73)
「哲人政治の理想」
  ↓
 「善のイデア」を頂点とする「イデアの世界の段階的全構造」、「全宇宙を一つの目的有る体系として思惟」
 「イデアの世界の現出」は「個人においてよりは全体としての完全な国家組織において可能である。」(74)
=倫理的共同体

 以上より、「プラトンの理想国家」は、「神的普遍と人間個人との中間にあって、人間と社会との救済の使命を全うしようとするのである」、「ギリシャ伝統の国民国家観の形而上学的構成であり、国家を生の全体的な共同体、本源的な統一体とする理想」、「古代国家哲学の古典的原型」(76)
 この点で、南原はゲオルグ学派とプラトン理解を一定程度共有している。
 問題は、このプラトンの理想国家論とキリスト教との関係である。ここに、ゲオルグ学派との明確な相違がある。

・キリスト教の「神の国」の予示
「はるかにギリシャ国民国家を超出し、次いで来る新しい時代の理念」(=キリスト教の「神の国」)を予示するものがある(77)。
「ただに滅びゆく古代国家の挽回の目的にあったのではなく、実に人類久遠の救済と世界の新創造との業の上にある」、「彼はいずこの地においてその構想した理想こっかの実現を期待したのではなく、かえって、天の彼方に完全国家の実現を指示したものと解することができる」(77)
  ↓
「その根本においてイデアと個物との二元的な世界観、個物を超えて無限の課題としてのイデアの認識への努力のごときは、無限と永遠とを却けて、一切を本来の完全な調和と統一において把握することをもってその本質とするギリシャ本来の精神とは矛盾するものがある」、「プラトンとキリスト教世界観とは内面的密接の関係を有するものとして考えられる。」(78)

 南原は、以上の点で、キリスト教との関連性からプラトンを解釈している。これも一つの伝統か。
もちろん、「キリスト教の神の国とプラトンの理想国家とは根本において区別されるべきものがある」(78)。この点を論じることは、次の課題になる。
 

 
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