ティリッヒ研究の新しい動向2

 ティリッヒは、昨年が歿後50年にあたり、京都大学キリスト教学専修でも、小さいながら、研究室紀要において、ティリッヒ特集を企画した。この半世紀の間に、ティリッヒ研究も多様な展開を示し、現在に至っている。発展史的な区分に即して言えば、後期ティリッヒから前期ティリッヒと初期ティリッヒへと展開であり、近年、さらに前期から中期への展開が予想される。この予想は、ドイツ語版ティリッヒ全集の補遺遺稿において、前期と中期をつなぐ、講義録が次々に刊行されつつある、ということに基づいている。たとえば、次のものである。

・補遺遺稿(ENGW.)XVII, 2012.
Paul Tillich. Frühe Vorlesungen im Exil (1934-1935)
これはアメリカ亡命直後の時期に、ユニオン神学校とコロンビア大学で行われた講議論である。ここから中期がはじまるわけであるが、中期の特徴と言えるキーワード、Welt-Haben、Selbst-Haben が登場し、また後期の『組織神学』に結実する、人間論(Die Lehre von Menschen)が展開され始めていることがわかる。
 この巻に収録の講義録は、2016年度の京都大学の演習で読みつつあり、そこからティリッヒ研究あるいは宗教哲学・神学の新しい研究成果が獲得されることが期待される。本来、演習とはそのようなものである。

・補遺遺稿(ENGW)XVIII. 2013.
Paul Tillich. Frankfurter Vorlesungen (1930-1933)
  こちらは、前期ティリッヒの最後の時期の講義録であり、中期の思索が突如出現したわけではないこと、そこにいかなる試行錯誤があったかを知る上で、重要な文献である。時期的に、『社会主義的決断』の成立期であることにも注目すべきである。

 以上は、これまでティリッヒ研究において利用できなかった資料であり、こうした資料の刊行が研究に大きな影響を与えることは、当然のことである。資料の急増は、計画的でいっそう地道な研究作業を要求し、同時に、研究を構想する力も問われることになる。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR