『福音と世界』から

『福音と世界』 2016. 6(新教出版社)が届きました。簡単に内容の紹介をいたします。

今回の特集は、「聖書と難民」です。
 「難民」は、現代世界が直面する大問題であり、先のイギリスの国民投票でも焦点の一つになりました。日本も決してこの問題の外に存在しているわけではありません。難民という存在は、近代の国民国家(と生政治)の成立とその崩壊によって、それ大きく異なる質を有していますが、しかし、比較可能な事態は、もちろん、古代から延々と存在し続け、現代に至っています。このような観点から聖書を読むことは、現代において重要な意味をもつものと思います。

・「日本における難民支援」(石川えり)
・「旧約のテクストから考える「難民」の一断面」(飯謙)
・「人の子には枕する所もない──「居場所」を奪われた人々とイエス」(山口雅弘)
・「敵意に抗う歓待の福音」(金性済)
・「ドイツから見る難民と教会」(橋本祐樹)
 
 特集に続き、次の二つの論考が収録されていますが、難民や人権という文脈で、特殊にも繋がる問題と解することができるでしょう。
・「国連女性の地位委員会のパラレルイベントに参加して」(福嶋美佐子)
・「現代の人身売買/人身取引をニューヨークで考えた」(宍戸ユリ)
 難民もそうであるが、現代社会は、「奴隷」という仕方で人権を剥奪された人間が存在する。決して、奴隷は過去の問題ではない。こうした人権をめぐる多様な負の問題は、相互に結びつき、しかも、現代社会のいわば表の秩序とでもいうべき仕組みとも絡み合っている。その根はきわめて深く暗い。

次に、連載(ほんの一部ですが)から。
・一色哲「南島キリスト教史入門」 21
 「「植村人脈」と南島のキリスト教(2) 仲里朝章と在京沖縄人キリスト者の軌跡

今回は、前回に続き、植村正久に繋がる、「もうひとつの「内村人脈」」である。
 「「植村人脈」の大地のクラスターは、南島に福音主義信仰をもたらした人びとで、南島に革新的な信仰を与えた」、「「植村人脈」の第二、第三のクラスターに属する人びとは、それらの信仰から多くを学びとり、主体的に受けとめ、実践してきた人びとである。」
 「沖縄島中部・西原町の丘の上に建つ沖縄キリスト教学院。その中心であるチャペルは、「仲里朝章記念チャペル」と名づけられている。」
 「この仲里朝章の戦前の歩みをたどっていくと、植村正久と富士見町教会に行き当たる。つまり、彼は、第二の「植村人脈」に属する典型的な人物である。」(62)
 「現在の杉並区の西荻窪あたりに沖縄出身者が多く住んでおり、伊波普猷も終戦間際に杉並の比嘉春潮宅に身を寄せていた。・・・ここに南島出身者のキリスト者コミュニティがあったことは確かだ。」(64)
 「戦後、無牧状態で放置されていた喜界島の教会に、「立って南に行け」との啓示を受けて赴任した福島二郎もまた、金井や富士見町教会の牧師を務めた島村亀鶴ら「植村人脈」とつながりが認められる。それらの福音主義信仰は、南島の島々にしみわたっていった。」(65)

・内田樹「レヴィナスの時間論」:「『時間と他者』と読む16」
今回の議論も、「被投性」「ある(イリヤ)」をめぐる内容ですが、新しい話題は、「不眠」です。

 「「ある」とはどういうものか、名詞に落とし込むことのできない事況を記述するために、レヴィナスは唐突に不眠の話を始める。」(53)
「不眠において私たちを苦しめているのは、私たちが意識を持ち、身体をもっているという事実そのものである。・・・眠るとはまさに自分が身体を持っていることを忘れ、意識を失うことだからである。自分が存在することそれ自体がもたらす不快。それが不眠の本質である。
 そして、このような事況を西欧哲学はかつて一度として主題的に考察したことがない。・・・西欧哲学は存在することの自明性を一度も疑ったことがない。存在が何かを欠いている欠落感や不充足感を覚えることはある。だが、存在することそれ自体を不快に感じたことはない。」
「そのときレヴィナスの念頭にあったのは、「西欧哲学」」「と総称されているが、ハイデガーの存在論である。」
「存在学(ontologisme)と戦うこと。」

 予告では、8月号の特集は「憲法9条は有効だ=非武装市民防衛の思想」とのことである。参議院選挙が終わった後、わたしたちはそれをどのように総括することになるのだろうか。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR