進化論・人類学・脳

 進化論と人類学は、相互に補強し合う関係にあるとも言えるが(人類に至る霊長類の進化の系統)、最近、それに「脳科学」が組み合わされることによって、面白い議論の展開がなされている。「脳」を介することで、進化論・人類学が、宗教を含めた人間の文化的領域に、より実質的な仕方でコミットする可能性が開かれた。こうした可能性について、わかりやすい本として次のものが挙げられる。タイトルのイメージは別にして、宗教に関してもきわめて興味深い議論が見られる。

ロビン・ダンバー
『友達の数は何人? ──ダンバー数とつながりの進化心理学』
インターシフト、2011年。

Part I ヒトとヒトのつながり
  第1章 貞節な脳(男と女)
  第2章 ダンバー数(仲間同士)
  第3章 親類や縁者の力(血縁)
  第4章 ご先祖さまという亡霊(民族)

Part II つながりを生むもの
  第5章 親密さの素(触れ合い・笑い・音楽)
  第6章 うわさ話は毛づくろい(言葉・物語)
  第7章 今夜、ひとり? (魅力)
  第8章 エスキモーのあいさつ (キス・匂い・リスク)
  第9章 ずるいあなた (婚姻)

Part III 環境や人類とのつながり
 第10章 進化の傷跡 (肌の色・体質)
 第11章 進化の邪魔をするやつはどいつだ? (進化と欲望)
 第12章 さようなら、いとこたち (絶滅の罠)
 第13章 こんなに近くてこんなに遠い (人類の起源)
 第14章 ダーウィン戦争 (進化と創造)  

Part IV 文化・倫理・宗教のつながり
 第15章 人間ならではの心って? (思考意識水準)
 第16章 カルチャークラブに入るには (文化)
 第17章 脳にモラルはあるのか? (道徳)
 第18章 進化が神を発見した (宗教)
 第19章 頭を使って長生きしよう (健康・知性)
 第20章 美しい科学 (芸術)

謝辞
解説──我らデジタルエイジの石器時代人 (本書出版プロデューサー 真柴隆弘)

 ダンバーは、進化論・心理学・認知科学・人類学という諸分野がつながる領域で活躍の科学者であり、本書でも出てくる「ダンバー数」で有名になった人物である。ひらめきはかなりのもので、たとえば、次の発言は、同意できるだろうか。

「そこであえて憶測するのだが、記憶力の発達には幼いときの丸暗記がけっこう重要な役割を果たしているのではないだろうか。それによってニューロン接続を強化するのだ」(246)。

 とすれば、「楽に学ぶ」という方法論は、「学ぶ」ということについて人類が開発してきた重要な部分を切り落としており、結局は科学の発達には逆効果とも言えるだろうか。
 なお、「進化が神を発見した」はおそらく正しいと思われるが(昆虫にとっては宗教も神も存在しない、あるいは「意識」されないという意味で)。しかし、これと「神の実在」とは論理的なレベルがことなる議論であることにも留意する必要がある。認識論と存在論の関わりと言っても良い。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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