南原繁演習より10

 今回は、南原繁『国家と宗教』、第2章「キリスト教の「神の国」とプラトンの理想国家」の最終節「四 問題の批判的解決への途」の前半(120-127頁)です(6月27日の演習)になります。

 前節「三」の最後の議論、「ヘーゲル的綜合」の分裂と崩壊から、マルクス主義への展開を受けて、この「宗教否定」の帰結から議論は開始される。南原は、この動向を、「ヘーゲルの絶対的観念論哲学に対する反動としてのマルクシズムの反宗教運動」として規定した上で、南原にとって現代(1920年代から30年代)の状況を、「現代における「宗教復興」」と特徴付ける(121)。これは、マルクス主義への反動であり、「再反動」というべきものと解される。今回のテーマは、この再反動についての分析である。

 なお、南原は、一方の極論が反動を生み、さらにそれが再反動を生むという仕方で、宗教の歴史的動向を解しているが、これは、南原の歴史哲学というべきものかもしれない。とこかくも、この再反動としての宗教復興に対する南原の評価は厳しい。

1.再反動の内実は、「精神的に真の敬虔と情熱もなくして、ただ政治的動機からこれを絶叫する」(121)。「特定宗教の信条を信奉しない者はややもすれば呪われた異端者、あるいは反逆者としての刻印」(121)

 これは、当時の日本を連想させる。「非国民」

2.古代的なものの復興。
 一般に古代世界では、「国家の主権者は同時に宗教上の首長である」、「政治と祭祀は常に一つに結合されるべきだという主張」、「徹底すれば一つの「国教」制度」(122)、「宗教的神聖は、人間の純粋に内的な心情においてよりも、神的な宗教的行事、すなわち、礼拝・祭典・儀礼などにかかっていた」、「全社会生活は宗教的伝統と権威によって規律せられ」、「一般に学的思惟のは発展が排除される」、「神々と個人と社会とが一つに国家において統合せられ、国家共同体の周囲に宗教的情熱とすべての道徳的義務と社会的利害とが凝集せられてある」(123)
 「近時プラトンに新しい解釈を与えることにより、その復興を考える者は、そうしたプラトンのギリシャ的・異教的要素を力説するものとして注意に値する。総じて近時における宗教復興の叫びは、キリスト教外において、そうした異教的雰囲気のうちに顕著なようである」、「民族共同体の全体的国家間観の復興」「神政政治の理想への復帰」(124)。

 まさに、当時の日本。

3.キリスト教の世界における復帰運動。
 「その一は中世への復帰の運動、すなわちカトリック主義の立場において、宗教の強調によってふたたび宗教と政治社会との結合の主張である」(124)。
 これは、新スコラ主義やネオ・トミズムと重なる動向だろうか。
 「その二はプロテスタント主義の立場に立ち、新たにヘーゲル哲学を再生させることにより、宗教と国家との綜合の回復に向う、いわゆる新ヘーゲル主義の主張である」。
「カントによって基礎づけられた批判主義の結果は、各文化領域の自律を宣したのみで、これが全体的綜合を欠き・・・」、「ヘーゲル的形而上学の再興によって、プロテスタント哲学の立場から全体の性の統一、文化の統一的体系を構成すること」(125)
 「カトリックへの復帰とヘーゲル哲学の再興こそは」「プラトン的古代国家理念とキリスト教の新しい神の国の理念との綜合の復活にほかならない」、「政治と宗教との綜合」、「神の国の具体的現実化、地上的組織化」、「前者からは「教会国家主義」」「後者からは「国家教会主義」」、「いずれもその強調するのは具体的普遍の観念」、「カトリックの場合には普遍的な「キリスト教教会」、ヘーゲル主義の場合には絶対的な「民族的国家」の概念である」(126)
 「現代イタリーにおけるファシズムの世界観的基礎づけを試みるに当って、ほかならぬカトリック宗教をもってする者」「また新ヘーゲル主義が努めてナチスに追随して、その哲学的基礎たろうとすることも、われわれには不思議ではない。」(127)

 では、日本では、何が哲学的基礎づけに採用されたか。
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