書評誌の意義

 キリスト教研究あるいは宗教研究に限定しても、日々多くの研究成果が、単行本、論集、雑誌論文として公にされており、自分にかかわりがある範囲でもその情報を的確につかむことは容易ではない。最新のもの(今月刊行の研究雑誌に掲載論文とか)や雑誌論文は、後日、目に付いたもの以外は当面把握することを断念するとしても、まだまだ多くの文献が、しかもおそらく注目すべき文献が存在している。
 そこで、重要になるのが、信頼のできる書評誌の存在である。情報はやや遅くなるが(1年から2年程度の遅れ)、しかし、しばしば読むべき文献の目安としては、貴重である。日本宗教学会や日本基督教学会の学会誌は、そうした役割を意識的に担っており、有用な情報が少なくない。
 わたくしは、現在、日本基督教学会の学会誌編集委員長をつとめているが、今年の9月下旬に刊行予定の『日本の神学』55号に掲載されることになる書評論文を先に読むことになる。55号で書評対象となる論集がきわめて興味深かったので、早速、入手してあちらこちらを読み始めている。それは、次の論集である。

加藤磨珠枝編
『教皇庁と美術』(ヨーロッパ中世美術論集1)
竹林舎、2015年。

序 教皇庁をめぐる美術史的問いかけ (加藤磨珠枝)

第一章 教皇たちの時代のはじまり
  ローマ司教からローマ教皇へ、その変遷 (藤崎衛)
  教皇ダマススの〈殉教者崇敬政策〉とカタコンベ美術 (山田順)
  旧サン・ピエトロ聖堂のアプシス装飾──「トラディア・レギス」図を巡って (山田香里)
  五世紀の教会堂建設──皇帝の都から教皇の都へ (加藤磨珠枝)
  四~五世紀のキリスト教会に見られる洗礼の様子
    ──古代キリスト教美術を理解するための一つの手掛かりとして (呉正謨)

第二章 中世の刷新
  カロリング朝とオットー朝時代のローマ美術
    ──教皇ハドリアヌス一世からシュルウェステル二世(七七二~一〇〇三)まで
    (ガエタノ・クルツィ)
  教会改革期の絵画──ローマを中心とするラツィオ地方 (伊藤怜)
  聖シルウェステル伝図像の諸相 (浅野ひとみ)

第三章 君主としての教皇
  十三世紀の美術──「勝利の教会 Ecclesia Triumphans」の時代 
    (アレッサンドロ・トメイ)
  ジョットの《ナヴィチェッラ》──失われた一大傑作モザイクの運命・構図の復元・
    造形的特色・制作年代 (越宏一)
  中世後期における教皇庁の墓碑彫刻──アルノルフォ・ディ・カンビオの革新
    (児嶋由枝)
  アヴィニョン教皇庁の美術 (谷古宇尚)
  サンタ・マリア・マッジョーレ聖堂主祭壇画──伝統と同時代性 (深田麻里亜)
  祝福のロッジアの形態の変遷について (飛ヶ谷潤一郎)
  Carolingi e Ottoni: arte a Roma da Adriano I a Silvestro II (772-1003) (Gaetano Curzi)
  II Duecento, il secolo della Ecclesia Triumphans (Alessandro Tomei)

あとがき
執筆・翻訳者一覧
関連項目索引

 美術史の論集であるので、図像が多く収録され楽しい論集である。論集の性格から、個人で購入するのは、やや大変かもしれない。いずれ、キリスト教学研究室には寄贈したいと考えている。キリスト教研究にとって、中世美術史は、隣接分野の一つである。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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