出版不況と専門書の行方

 出版不況の厳しさは、直接間接にさまざまに感じられてきたことであり、出版・書籍販売という産業が大きな転換を迫られていることは周知のことであった(この不況は、新聞からマスコミへと広がることになる、あるいは広がっている)。これは、人類の知の形態の変化の中の一断面というべきだろう。

 昨日、一通の封書が届き、平成32年の創業70年をもって会社を解散するとの挨拶状が同封されていた。良質な学術書の出版で知られた創文社である。わたくしも、20年前にティリッヒ研究書の出版でお世話になり、その後は、京都哲学会の代表をつとめた際に、『哲学研究』の編集・出版でもお世話になった出版社である。創文社から専門書を出版することには、人文系の研究者には独特の想い・イメージがあったものと思われる(岩波書店もそうだろうか)。キリスト教学研究室の歴代教授も、創文社から研究書を刊行してきた(有賀先生の著作集をはじめとして)。

 その出版社が、「現在出版界は未曾有の大不況」で「売上高が三分の一まで縮小」し、ついにさまざまなやりくりも限界と判断し、創業70年を目途に「全ての業務を停止し、会社を解散する。弊社本社ビルは売却する」とのことである。

 この背景には、「大学予算の縮小化に伴う大学図書館への販売の低迷」「学術論文・博士論文の電子化・オンライン化」などが存在し、この流れは抗しがたいものがあると思われる(日本人が学術書を読まなくなったということは別にしても)。大学予算の縮小による大学の公費での書籍購入の圧迫は、実際、切実な実感である。キリスト教学研究室でも、まだ今年度の予算配分が決まったばかりであるにもかかわらず、すでに、図書の購入停止時期をいつにしなければならないかが気になり始めている。年々、図書の購入停止時期は早まる傾向になり、昨年度は、12月中に書店に、納入の停止をお願いした。今年はどうだろうか。こんな中で、世界的な拠点大学を目指すという号令であるが、夢のまた夢の感がする。

 専門書が売れない、売れないと価格が上がり(最近の洋書の価格は、ちょっとした厚さで、すぐに数万円になる。このようなものがどんどん出版されるのであるから、大変な状況である。さらにオンラインジャーナルも高騰傾向であり、どうなるのだろうか)、さらに売れない、このプロセスにすでに入っている。

 創文社の解散については、実は、少し前から噂に聞いていたことではあったが、現実に挨拶状が届くと、大きな衝撃を感じざるを得ない。しかし、専門書を執筆する側としては、こうした状況に対して、安く確実な出版方法を模索せざるをえない(ただちに電子出版に移行する前に)、ということになる。この実験もすでに始まっている。
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