『福音と世界』から

『福音と世界』 2016. 8(新教出版社)が届きました。簡単に内容の紹介をいたします。この時期、授業は一段落しつつありますが、本日を含め研究会が8月上旬までいくつか設定されており、さらに学会関連の仕事も締めきりが迫るなど、夏休みはすでにかすみつつあります。

 まず、今回の特集は、「憲法9条は有効だ 非武装市民防衛の思想」です。
 すでに、参議院選挙も終わり、改憲勢力3分の2という状況が顕わになったわけであるが、この時期に合わせ、いくつかのキリスト教系の雑誌では、憲法・平和というテーマでの特集が企画された(わたくしも、『信徒の友』に短文を寄稿しました)。今回の特集はその一つである。改憲プロセスは一段階進んだとはいえ、これから先がまだまだ長い道のりがあり、体制を建て直す必要があります。そのためにも、今回の特集は有益と思われます。「非武装市民防衛」の思想と具体的路線を確認することによって、来たるべき論争に備える必要があるでしょう。ともかくも、理想を明確化し、しかもまさに現実的であるべきです。

・「非武装市民抵抗の構想──憲法9条の防衛戦略」 (宮田光雄)
・「ナチ占領下におけるノルウェーの非暴力抵抗と「消極的平和主義」」 (大島美穗)
・「武器なき国防は不可能だろうか──ジーン・シャープの非武装行動論を手がかりに」 (三石善吉)
・「絶対的非暴力への「躊躇」が開く対話の可能性」 (河見誠)
・「若者たちに再び武器をとらせない──平和の創りだす働き人を育てる」 (比企敦子)
・「正義に基づく平和の倫理」 (ユルゲン・モルトマン)
 
 特集に続き、特集最後のモルトマンの文章の翻訳者である、福嶋揚さんが、次の書評を執筆しています。
・「書評:柄谷行人『憲法の無意識』 「九条の謎と信仰の奥義」」 (福嶋揚)

次に、連載(ほんの一部ですが)から。
・一色哲「南島キリスト教史入門」 22
 「照屋寛範の南洋伝道とバプテスト教会 「土着」と「越境性」のはざまで」

 「一九五三年一一月、バプテスト系諸教会は、沖縄キリスト教会を離脱し、沖縄バプテスト連盟を結成した」、「現在、沖縄県で最大の教会数・信徒数を有している」(64)。
 「バプテストには、その内部にかかえた「異邦性」を許容し、ナショナリティを超えていく「越境性」があある。その一方で、独自の方法で信仰を掘り下げようとする「土着性」をも備えている」。
 「沖縄のキリスト者のなかには、《琉球=沖縄》のことを、「エデンの園」や「第二のエルサレム」と考える人びとがいる。これらの人々は、土着のものとキリスト教信仰を結びつけて理解することで、水からの親交を深めていく。そして、その福音理解をもとに、自分たちを苦難と隷従から解放することを希求する。照屋が示した土着への足がかりは、彼の意図を超えて、南島に広範な広がりをもつことになる。」(67)

・内田樹「レヴィナスの時間論」:「『時間と他者』と読む17」
今回の議論も、「被投性」「ある(イリヤ)」をめぐる内容ですが、内容は、前回の「不眠」に関わるものです。

 「「ハイデガー的風土からの訣別」、「「ハイデガー的風土」」とは「そこでは誰一人として、存在の欠如が「悪」であり、「痛み」であり、「不快」であり、「病」であるということを疑わない風土のことである。レヴィナスはそこから「出る」ための理路を開示することを哲学史的課題として引き受けた。」(53)
 ここで、ソシュールの『一般言語学講義』を実例としつつ、「レヴィナスの言う「ハイデガー的風土からの離脱」という企画がいかに困難なものであるか」が述べられ、では、どのような仕方でこの困難を克服するかへと議論が進まれれる(=議論は戻る、あるいは反復される)。これが、「不眠」に基づく「存在の過剰」についての分析である。
 不眠とともに、注目されるのは、「恥辱」(「自分のありのままがあまりにありありと開示されているがゆえに苦しんでいる」55)、そして、「吐き気」(「私が私であることから逃れたいのに逃れられないことの不快」56)である。これらは、「純粋存在という経験そのもの」であり、「レヴィナスはこの経験から出発すべきと主張する」(56)。
 こうして、「ハイデガー的風土からの離脱」とは、そこから「逃走」ということになる。
「逃走とは自分自身の外へ出たいという欲求のことである。言い換えれば、自分が自分自身であるという、最も根源的で、最も仮借ない繋縛を断ち切りたいという欲求のことなのである。」

 こうした「自分のありのままがあまりにありありと開示されているがゆえに苦しんでいる」とは、キリスト教的な「原罪」、あるいは「魂の牢獄としての身体」と、どのように関わるのだろうか。
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