『図書』から

『図書』 2016.8 (岩波書店)が届きました。
 いくつかのエッセイを紹介します。

・今回の巻頭は、塩川徹也「パスカルの『パンセ』」です。
 父親の思い出から始まる文章です。

・中村滋 「数学を学び直す人びと」
 「近年「数学ブーム」が起きていると言われます」。
 「私が担当している講座は、お話としての数学の美しさや素晴らしさを伝えるものと、テキストに基づいて数学を学ぶものにわけられます」。

 数学ブーム、現代日本のような状況(まだ時間と意欲と金銭的な面で豊かな層が存在している)では、ある意味では、当然のことだろう。数学は面白い。

・色川大吉「「死んだらどこへ行くのかと嘆くな、アーナンダよ」と釈尊は戒める」(フーテン老人世界周遊記1)
 
 宗教的な色彩を帯びた意味での仏教的というよりも、人類の知恵の射程での「死」「嘆き」ということだろうか。

 以上のほかにも、面白そうな文章は存在するが、最後は、
・高村薫「作家的覚書」。今回は、「2016年のヒロシマ」
 「抗議行動どころか歓迎ムード一色だったオバマ氏の広島訪問」
 「オバマ氏の広島訪問の風景は、この国において、原爆を落とされたことの怒りや苦しみはもはや完全に風化したことを告げるものだった。」(43)

 オバマのヒロシマ訪問には、さまざまな見解がある。わたくしの広島の知人からは、テレビでのオバマの広島訪問報道について、「オバマが誰も居ない平和公園で演説。核廃絶の具体案無し。プラハの演説のように被爆者が集まっていたら石、投げられてた。隣の婆さん、「厚かましい」と切り捨てた。」とメールが届いた。
 とすれば、怒りや苦しみが風化したというよりも、怒りや苦しみが存在しないかのような報道のみがなされた、ということであろう。マスコミとはこんなものと指摘しても、それだけではしかたがないことではあるが・・・。
 
 アメリカに象徴される自由民主主義は、人権、民主主義、自由といった理念を掲げて世界に関わってきた。欺瞞的と言えばきわめて欺瞞的であり、ダブルスタンダードの典型である。従来は、その中に、民主党と共和党が存在し、アメリカを演じてきた。オバマとトランプは、突き詰めれば同じストーリーの展開の中で、役割を分担しているとも言える。問題は、どっちも結局同じと切り捨てるのか、あるいは結局は同じでもややましと思える方を支持するのか(ほんとうにましかは自明ではない)、ということになるだろう。オバマの広島訪問とは、こうした図式の中で解すべきものと思われる。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
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