南原繁『国家と宗教』1

 南原繁『国家と宗教──ヨーロッパ精神史の研究』(1942年)については、本ブログで、かなりの回数にわたって、取り上げてきた。今回は、岩波文庫版などに、補論として収録されている「カトリシズムとプロテスタンティズム」(1943年)について、連続して、取り上げることにしたい。この補論は、2015年度後期の京都大学での演習で扱ったものであるが、改めて、ポイントを抜き出してみたい。

 なお、この補論は、岩波文庫で80頁ちかくあり(335-411頁)、『国家と宗教』の一つの章の大きさである。内容的にも、『国家と宗教』との関連でも、十分な分析を必要とする重要な文献と位置づけられねばならない。全体は、「一」(335-338)、「二」(338-344)、「三」(344-351)、「四」(351-365)、「五」(365-384)、「六」(385-398)、「七」(398-406)、「八」(405-411)にわかれているが、順次、紹介してゆきたい。

 今回は、「一」。ここは、この補論の導入、特に補論をことになった経緯の説明である。
 ポイントは、「ヨーロッパ精神史」についてのコメントと、『国家と宗教』に対する三人の論者による書評へのコメントである。

・「ヨーロッパ文化を構成する根本契機の一つがキリスト教」であること。「中世的と近世的」なキリスト教の存在類型としての「カトリック主義とプロテスタント主義との二大類型」。「人がヨーロッパ文化を──別しては宗教と国家との関係を論ずる場合、結局、キリスト教に対していかなる態度を取るか、さらにはその二大類型についていかに考えるかによって、おのずから異なる見解を生じて来るとは、必然のことと言わねばならない。」(335)
 「『国家と宗教』は」「問題の発展につき、客観的=文化的意味の「理解」を目的としたもの」、「意味の理解には、同時に「批判」が含まれており、すでに著者の「立場」が前提せられてあること」(336)

 南原の精神史という問題を理解する上で、類型という方法論的な概念はきわめて重要な位置を占めている。これは、南原のテキストの即した分析に加え、思想史的な論究が必要になる。これは、南原自身が方法論的に取り下げた説明を行っていないためであるが、上の引用からだけでも、「発展」「文化」「理解」「意味」「批判」などのキーワードからその思想的前提を把握することは難しくない。

・「本書の紹介ないし批評として」、「石原謙博士」「田中耕太郎教授」「三谷隆正氏」の三氏のものが挙げられる。
 これらの書評にうち、南原に補論を書くことの必要性を感じさせたのは、田中耕太郎(「カトリック主義の法理学者」)の書評である。
 「田中教授のは、形式・内容とももっぱら学問的に扱ったもので、一面、著者の側に立った理解につとめられるとともに、他面、個々の点に立ち入って批判探求の労を惜しまず、そこには若干の疑義や異見が提出されてある。しかし、それらに対しては、著者としてはいずれも弁明と主張の根拠を有し、ますます本書における以前の論証を支持し、あるものは一層強く表現し、あるものは一層詳しく説明するを適当と感じざるを得ない。」(337)

 というわけで、この補論は田中耕太郎の書評への応答という意図をもったものと言えるが、『国家と宗教』の内容について必要な補足説明を行ったものなのである。
 取り上げられるのは、主に次のテーマである。

「カトリシズムとプロテスタンティズムが政治社会理論についていかなる点に相違の根拠があるか」
「プロテスタンティズム自体がいかなる問題を内包するか」と「将来の解決の方向」
「わが国がこの問題に対して何を寄与し得るか」、「日本におけるキリスト教の将来の問題」(338)


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