『図書』 から

 『図書』 (2016. 10. 岩波書店)が届きました。
 目についた、エッセイを紹介します。

・稲垣伸寿「小説のサバイバル」
 雑誌の編集者という立場から、「誰もがパソコンに向かってキーを叩きさえすれば、小説は書ける」、「この小説における手軽さ」が、「小説の危機」につながっているという問題を扱っている。

「これほど多くの小説雑誌が刊行されている国で、どうして小説に危機が忍び寄っているのか。小説の読者が減っているのか、悪貨が良貨を駆逐しているのか、すでての小説編集者は、その理由を真正面から真剣に考えなければならない時期に来ているように思われる。」

 この小説の危機は、文化全体に広がる危機である。ただし、さしあたりは、この200年程度の時代の中で定着し支配的になった文化形態の危機であり、それは形態転換と解すべきかもしれない。ともかくも、大学も、マスコミも、小説も、危機的という認識で繋がってくる。

・ジョルダン・サンド「ユネスコと多文化主義革命」
「教育や文化遺産保護における多文化主義革命と同時期に、文化人類学者は「文化」概念を脱構築した。なかには「民族文化」というカテゴリー自体を拒否する立場をとる研究者もいた。」
「ユネスコは何を文化遺産に申請するかを判断する国家と、その指定によって潤う観光産業という二つの障壁に、立ち向かうことができないでいるのだ。」
「多文化主義がもはや革命の源泉を見失ってしまった私たちの現在かもしれない。」

 この文化、観光と宗教とは密接に絡み合っている。

・室謙二「すでに大統領選挙は終わった」

 このエッセイの時点での状況から、変化がみえるというのは、わたくしだけだろうか。分析はそう単純ではない。

・高村薫:作家的覚書「お祭りのあと」
 「例年のように国民が過去の戦争を振り返って平和への思いを新にするよりも、オリンピックに沸いてくれたほうが、政権とっては内外のきな臭い状況から国民の眼を逸らせるという意味で、都合がよいということかもしれない。」
「してみれば、こうしたお祭り騒ぎはつくりだしているのは、私たち自身だということもできよう。」
「なんと恐ろしい女性たちだろうか。」

 マスコミが一斉に、スポーツや芸能スキャンダルを報じ始める、しかも、争点になるべき重大な問題が存在するときに限って。これは、マスコミの重要な役割とされているものにほかならない。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
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