キリスト教研究の成果

 日本においても、キリスト教研究は戦後70年の過程でそれなりの進展、深化、展開を示して、現在に至っている。当初は、思想研究にかなり偏っていた研究テーマが、しだいに歴史研究へ、また欧米に偏っていた研究が、しだいにアジア・日本を射程に入れるようになってきた。もちろん、文学や政治、経済、科学などの諸領域に関わるキリスト教を扱った研究はまだまだこれからであり、未開拓の分野は少なくない。また、研究者の層が十分に広がらない中で、研究分野が広がったため、従来の思想研究がむしろ手薄になったとってきたという問題もある。
 さまざまな問題を抱えつつも、ともかくも日本のキリスト教研究は着実に進みつつある(何処に向かって?)。そこに、日本国内の地域的な特徴を見えることもできるかもしれない。
 今回紹介するのは、最近、寄贈いただいた雑誌であるが、これは、北海道基督教学会の学会誌であり、学会誌掲載の会則によれば、会則発効が、昭和37年とあるので、半世紀を優に超える歴史を有することが推測される。収録の論文は、北海道という地域にも関わりのあるテーマを扱っており、おそらく、これはこの学会の特徴と言うべきものであり、北海道におけるキリスト教研究の具体的な形を示しているものと思われる。
 もちろん、この視点をはずしても、収録された論文はそれぞれ興味深いものである。女性観はキリスト教という宗教を批判的に論じる上で不可欠の視点であり、また内村鑑三とジェイムスとの比較は、内村の思想をキリスト教思想として論じることが、いわゆる「日本キリスト教史に閉じないために有効である。

北海道基督教学会
『基督教学』 第51号、2016年。

論文
宮部金吾の女性観 (ステファニー・コマシン)
内村鑑三とW・ジェイムズ──比較による再読の試み (堀 雅彦)

研究発表要旨
ハイラーの祈り論をめぐって (宮嶋俊一)

 キリスト教研究は、一方で普遍的な事柄を問うものであるが、他方でその普遍性は具体性においてはじめて追求可能であり、研究はその営みが遂行される具体的な場と一定の関係を有するのは、当然の動きである。日本・東アジアという場を現実的な基盤とした研究は、この場を射程に入れることになり、これは冒頭で言及した日本におけるキリスト教研究の展開が示す通りである。
 グローバル化が一元化でないのと同様に、思想の普遍性は具体的な場の抽象化とは別の事柄であろう。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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