南原繁『国家と宗教』8

  今回は、いよいよ、南原繁 『国家と宗教──ヨーロッパ精神史の研究』 の補論「カトリシズムとプロテスタンティズム」(1943年)も、その最終部分「八」となります。「国家と宗教」という問題設定の意味(精神のレベルの問いであること=「ヨーロッパ精神史」)を確認した上で、同時代の政治状況の大問題であるナチズムを再度論じ、来たるべき戦後の世界秩序とそこにおけるドイツと、そしてキリスト教の意味を展望するというものである。確かに長いスパン(50年を超える)で見れば、南原の展望の確かさを確認できるように思われる。
 最後の部分で、ドイツの運命としてのナチスが論じられ、その後が展望されたことは、 『国家と宗教』の深層にある意図を浮かび上がらせるものと言える。なぜなら、この補論は 『国家と宗教』の「全体の「緒論」であり、同時に「結論」でもある」(第三版の序)からである。そしてこの補論の結論がナチズムをめぐっているわけである。さらに、このナチズムの問題が日本の天皇制国家・国体と繋がっていることを念頭におくならば、 『国家と宗教』は、1942年という時代状況で、天皇制国家の精神性を理論的に批判し、戦後を展望した書と評することは決して不当ではないように思われる。

 以下、抜粋。
「問題の核心は、教会と国家との関係にあるのでなく、それを超えてあくまでキリスト教精神と国家精神との関係にあると思う」
「現代ドイツ・ナチス的精神」「ニイチェと同じく、何故カトリックおよびプロテスタントを通じてキリスト教一般を否定し」「むしろ古代世界への復帰に向かったか」(406)
「中世から近世にわたって」「国家は単に権力的手段視または機構視せられ」(406)
「ナチスは、むしろそれを徹底して、そうした自然的存在の背後に、かえって「暗き深淵」を覗かしめ、新たに国家の種族的=生物的存在の力を強調することによって、巨大なデモーニッシュな国家をつくり、あらゆる精神的=価値的なものをみずからのうちに引き寄せて、みずから生の根源的な創造的原理たらんとするものと解して差支えない。ここにヨーロッパ文化の伝統であるギリシャ的真理概念もキリスト教理念も、すべて民族的非合理的価値に吸収される結果になったのである」
「「政治的真理」の報復であり、「国家理性」の高揚」、「民族的政治共同体それ自身、一個の偉大な個性として、自己の存在の権利とその政治的=歴史的現実の価値の主張である」、「この偉大な世界の政治的現実」(407)
「ナチスにおけるこうのような新たな「政治的現実性」の意義は、ほかならぬドイツ理想主義・・・との、永遠の離反に終わるであろうかということである。そこに今後の問題が横たわると思う」。
「かの本来のドイツ精神の深味」「いかなる現実のなかにも理念を持ち込み、理念と結びつけ、それに従って形成しなければ已まぬ精神」「「精神の国」「理性の国」」「国民をして真の統一的全体たrしめる最深の根拠」「純粋なキリスト教理念とギリシャ主義への通路」「カントやルッターが歩んだ道」(408)
「国家共同体は、それを構成する個人の自律、言いかえればその宗教的信仰ならびに文化的作業の自由の意志による内面的紐帯なくしては、決してみずからの自律性を確立し得ないということである」
「この本来のドイツ精神の回復と同時に、ドイツ国民は一般にヨーロッパ文化と共同し得る「世界主義」の理念をもふたたび見いだすであろう。それが見いだされるとき、その基礎においてのみ、ヨーロッパの真の秩序が樹立されるであろう」
「世界史的転換の事業に呼び出されたもの」(409)
「ヨーロッパ諸国民、全人類の共同の課題として認識せられることが重要である」、「単なるヒューマニズムでなくして、いままでよりも一層内的に人類相互を結びつけることを必要とし、そのために諸国民のあいだに緊密な精神的紐帯の結合と深い内面からの新たな建設を必要とする」、「力強い内的生活の形成が不可欠」「端的に言って、宗教──独自の精神の世界の開示が必須である」
「おのおのの人間の魂に神的絶対者を映し出すことによって」「人間を真の精神文化の闘士として固く共同体に結合」
「それはもはや民族共同体を超えて広く世界と人類に結びつけねば已まぬであろう」、「それぞれの諸国民相互のあいだの協同によって、新しい世界の道義的=政治的秩序が創られねばならない」(410)
「個々の宗教のほかに、ついに全人類を包括せねば已まぬ世界的=普遍的宗教」(410)「としてのキリスト教」、「何よりも心情の純粋な内面において新しい世界を開き、万人を結びつけることによてt、最深かつ不変の基礎を供する」
「その諸教派は、キリスト教内部の対立を超えて、同じく世界歴史的現実のなかに不可視の「神の国」の建設を目ざして、共同の事業に参加することが要求されるであろう」(411)。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR