現代キリスト教思想の動向

 すでに、本ブログを一定期間、ご覧いただいている方は、ご存じと思うが、わたくしは、この10月から 『福音と世界』 (新教出版社)で、連載 「現代神学の冒険」 を開始し、すでに2号分が刊行された(原稿は、11月刊行予定の12月号の分まで入稿済みである)。この仕事もあって、このところ、現代キリスト教思想動向に継続的に注目してきている。こうした作業を本格的に行おうとすると、情報を集め、その内容を確認し、分析するという地道な努力が必要になる。もちろん、この仕事ばかりを行っているわけではないので、こうした地道な作業を、ある程度精度や包括さを犠牲にしつつ、効率的に行うことにならざるを得ない(あとは、運と勘である)。

 こうした中で、改めて、意欲的な企画であったことを感じさせられたのは、次の文献である。

熊澤義宣・野呂芳男編
『総説 現代神学』
日本基督教団出版局、1995年。

刊行のことば

第一部 現代神学の状況
序説 現代神学の動向 (野呂芳男) 
Ⅰ 現代神学の潮流
 第一章 弁証法神学の展開と第二次世界大戦 (熊澤義宣)
 第二章 現代の組織神学(1)──第二次世界大戦後の二十年間の神学の動向 (笠井恵二)
 第三章 現代の組織神学(2)──一九六五年以後
    A ドイツ語圏の神学者 (掛川富康)
    B 現代アメリカの組織神学 (森本あんり)
    C アジアの神学者 (蔵田雅彦)
 第四章 諸教会の神学
    A 現代カトリック神学 (高柳俊一)
    B 現代のギリシャ正教の神学 (高橋保行)
    C 現代イギリス神学 (関正勝)
    D 現代福音派教会の神学 (宇田進)

Ⅱ 現代神学と倫理学
 第一章 第二次世界大戦と倫理の問題 (村上伸)
 第二章 状況倫理 (江藤直純)
 第三章 自然の神学 (安田治夫)
 第四章 
    A 性と家族 (佐藤悦子)
    B キリスト教倫理と性──同性愛の問題 (小林惠一)

Ⅲ 現代におけるキリスト教真理と弁証、現代弁証論課題
 第一章 解釈学と神学 (雨貝行麿)
 第二章 神と現代人(1) (日比野英次)
 第三章 神と現代人(2)──アウシュヴィッツ・ヒロシマと現代神学 (金子啓一)
 第四章 神と現代人(3)──深層心理学と神学 (西垣二一)
 第五章 現代科学の神 (小田垣雅也)

第二部 二十一世紀神学の課題
Ⅰ 解放の神学 (梶原寿)
Ⅱ キリスト教と諸宗教
 第一章 キリスト教の絶対性をめぐって (寺薗喜基)
 第二章 諸宗教との対話 (延原時行)
Ⅲ エキュメニズム
 第一章 エキュメニズムにおけるキリスト論と贖罪論 (畠山保男)
 第二章 伝道論的課題──アジアの神学 (小山晃佑)
Ⅳ 人権の神学
 第一章 反差別の神学(1)──マイノリティの解放と神学方法の転換 (栗林輝夫)
 第二章 反差別の神学(2)──反差別神学としての愛する権利の確立 (申英子) 
 第三章 障害者の神学 (熊澤義宣)
 第四章 フェミニズムと神学 (指谷朋子)
Ⅴ 開け行く宇宙とキリスト教信仰 (野呂芳男)

まとめ──将来の神学形成を目指して (野呂芳男)

あとがき (熊澤義宣)

人名索引
事項索引
執筆者紹介

 現時点から見ても、よく考えられた企画であり、現代神学を包括的に捉える努力と苦労がうかがえる。正教会、福音派までをきちんと扱った企画は、この後も日本ではほとんど見られないものであり、「現代神学」を名乗る限り、伝統的なプロテスタント諸教派(いわゆるメインライン)で話が完了するというのは、錯覚・怠慢以外の何物でもない(こう言うのとそれを実際に行うのとでは、大きな落差が存在するわけであるが)。
 しかし、現時点から見ると、内容の配置と構成、それと執筆者については、工夫の余地がかなりあったようにも思われる。また、全体が、教義学・倫理学・弁証論という伝統的な組織神学の輪郭がイメージされていることから、全体が組織神学という構想も存在していたように感じられるが、第一部Ⅰの「現代神学の潮流」では、教義学がカバーできていない、というよりも、こうしたいわばエキュメニカルな企画で「教義学」が扱えるかという問題が存在する。「現代」の神学状況で、組織神学を構築する困難さがここにある。
 組織神学のいわば不在ともいうべき事態を理解するか、あるいは、現代「神学」という言いながら、聖書学やキリスト教思想史が場を持たないことをどう考えるか。貴重で大胆な企画であるとともに、多くの問題点が浮かび上がる論集である。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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