宗教哲学の諸問題1

 この後期から、京都大学の特殊講義において、「キリスト教思想と宗教哲学」というテーマに取り組み始めています。今年度はまだ、キリスト教思想・宗教哲学を歴史的に概観し、問題を明確化する作業にとどまりますが、これから、しばらくの間は、「キリスト教思想と宗教哲学」という問題をめぐって講義を進める予定です(おそらく、京都大学で行う特殊講義の締めくくりになるものと思います)。

 歴史的概観を行う中で、意識していることがいくつかあります。
たとえば、宗教哲学と神学との関係をその歴史的起源に遡って考えるとき、それは一つの共通源泉が存在することである。そもそも、その起源において、神学は哲学に含まれていた。その後、キリスト教の思想的展開過程で、神学と哲学は分化し、それぞれの展開を辿ることになるが、両者は完全に切れることなく、その関係性を保持し続けてきた。神学と宗教哲学という問題設定はそれ自体歴史的な現象であり、したがって、歴史的理解(さしあたりは思想史的分析)が要求される。
 しかし、宗教哲学は哲学として普遍性に定位しているものの、その具体的な諸形態においては、伝統的な存在形態をとっている(「哲学」自体がそうである)。ここで重要になるのは、近代以降の宗教哲学が、言語を基盤とする国民国家・民族と結び付いていることである。この点で、典型的例と言えるのが、イギリスにおけるキリスト教的哲学・宗教哲学・哲学的神学の伝統であり、それは日本においては十分に認識されているとは言えないが(もっぱら宗教多元主義という観点からではあるが、ジョン・ヒックは日本でも比較的知られてはいるが)、近代以降、ドイツやフランスの類似の思惟とは、良くも悪くも対照的な内容をもって存在している。

 たとえば、1980年代前後、イギリスにおいては、次の対照的で独自の宗教哲学者が活躍し、「キリスト教思想と宗教哲学」という問題にとっては、重要な思想が展開されてきた。

Richard Swinburne,
The Existence of God, Second Edition,
Clarendon Press, 2004(1999).

Introduction
1. Inductive Arguments
2. The Nature of Explanation
3. The Justification of Explanation
4. Complete Explanation
5. The Intrinsic Probability of Theism
6. The Explanatory Power of Theism: General Considerations
7. The Cosmological Arguments
8. Teleological Arguments
9. Argument from Consciousness and Morality
10. The Argument from Providence
11. The Problem of Evil
12. Arguments from History and Miracles
13. The Argument from Religious Experience
14. The Balance of Probability
Additional Note 1: The Trinity
Additional Note 2: Recent Arguments to Design from Biology
Additional Note 3: Plantinga's Argument against Evolutionary Naturalism
Concordance
Index

 日本のキリスト教思想研究では、いまだに自然神学は終わったといった議論を耳にすることがあるが、それは、特定に伝統のみしか視野に入れられていない、偏狭な認識と言わねばならない。キリスト教思想の世界は、それほど単純ではない。
 イギリスの宗教哲学においては、自然神学の伝統がしっかりと存在しており、上に目次を掲載したシュヴィンバーンの議論とヒックとの問題の連続性を正確に捉える必要がある。
 もちろん、もう一人の独特な思想家を忘れてはいけないが。

Don Cupitt,
After God. The Future of Religion,
Basic Books,1997.

Introduction
Part I: The Coming of the Gods
1 Souls, Spirits, and Gods
2 Why Spirits?
3 The First Gods
4 The Coming of God
5 God and Greek Philosophy
6 Where Are the Gods?

Part II: The Departure of the Gods
7 Mysticism
8 The End of Dogmatic Metaphysics
9 History and Humanism
10 Culture and Language
11 The Time of the Angels

Part III: Religion After the Gods
12 The Legacy of the Old Religions
13 Naturalism, Philosophy, and Religion
14 Globalization and the End of the Other
15 The End of Morality and the Return of Ethics
16 Innocent Religion?
17 The Poetical Theology
18 World Religion

Bibliography
Index

 これは、必ずしもキュピットの主著とは言えないかもしれないが、かれの主張はよく現れているように思われる。立場は異なるが、ここにも、イギリス的伝統は作用している(ハイデッガー的ではあるが)。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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