新約聖書学の動向

 現在イギリスで影響力のある神学者として、N・T・ライトの名前が挙がりましたので、新約聖書学の動向として紹介します。すでにいくつかの邦訳もあるようですが、本格的なものとしては、次の著書でしょう。

N・T・ライト
『新約聖書と神の民 上巻』(キリスト教の起源と神の問題1)
新教出版社、2015年。

日本語版のための序文
序文

第Ⅰ部 序論
第1章 キリスト教の起源と新約聖書
  1.序論
  2.課題

第Ⅱ部 課題のための方法
第2章 知識
  1.序論
2.批判的実在論について
  3.ストーリー、世界観、そして知識
  4. 結論
第3章 「文学」、ストーリー、そして世界観の応用
  1. 序論
  2. 読書について
  3. 文学について
  4. ストーリーの性格
第4章 「歴史」、そして紀元1世紀
  1. 序論
  2. 「ありのままの歴史」は不可能だ
  3. 「事実は存在しない」ということではない
  4. 歴史学のための方法論:仮説と検証
  5. 出来事から意味へ
  6. 1世紀の宗教運動の歴史的研究
第5章 「神学」、権威、そして新約聖書
  1. 序論:「文学」と「歴史」から「神学」へ
  2. 世界観と文学
  3. 神学、物語、そして権威
  4. 結論

第Ⅲ部 ギリシャ・ローマ世界における1世紀のユダヤ教 
第6章 背景とストーリー
  1. 序論
  2. 古代ユダヤ教の背景としてのギリシャ・ローマ世界
  3. イスラエルのストーリー、紀元前587年~紀元70年
第7章 多様性の広がり
  1. 序論:社会的背景
  2. 反乱への動き
  3. ファリサイ派
  4. エッセネ派:脚光を浴びるセクト
  5. 祭司たち、貴族たち、そしてサドカイ派
  6. 「普通のユダヤ人たち」:序論
第8章 ストーリー、シンボル、実践 イスラエルの世界観を構成するもの
  1. 序論
  2. ストーリー
  3. シンボル
  4. 実践
  5. 「聖書に書かれているとおりに」世界観の錨
  6. 結論:イスラエルの世界観
第9章 イスラエルの信仰内容(beliefs)
  1. 序論
  2. 1世紀のユダヤ人の唯一神信仰
  3. 選びと契約
  4. 契約と終末論
  5. 契約、贖い、そして赦し
  6. 結論:信仰内容
第10章 イスラエルの希望
  1. 黙示的なもの(Apocalyptic)
  2. 捕囚の終わり、来るべき世、そして新しい契約
  3. 神より他に王なし
  4. 来るべき王
  5. 世界、イスラエル、そして人類の刷新
  6. 救いと義認
  7. 結論:1世紀のユダヤ教

訳者あとがき

 方法論的な議論がきちんとなされた上で大きな構想の中での論の展開であり、意欲的な著作である。背景に、リクールなどの現代哲学の動向も見え隠れし、「第5章 「神学」、権威、そして新約聖書」の「1. 序論:「文学」と「歴史」から「神学」へ」の議論の設定などは、わたくしも従来から論じてきた主張も合致している。新約聖書学でもこうした議論を行う研究者が現れていることは心強い(印象としては、ドイツとアメリカの中間的なポジションと言えるだろうか)。議論の細かな点においても、示唆的な内容が少なくない。
 訳語の選択に気になるところも存在するが、訳者あとがきは詳細であり、ライトを理解する助けとなる。
  
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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