キリスト教と出版

 昨日は、キリスト新聞社創業70周年の記念講演会において、講演を行った。キリスト教・宣教・出版という問題は、以前より地道に継続している研究テーマであり、これまでの議論を一歩前進させることができたように思う。もちろん、聞き手にとって、わかりやすいことになったかはやや疑問が残るところではあるが。
 出席者は当然のことながらキリスト新聞に関わりの方々であるわけだが、少しイメージしていたのとは、異なっていた(東京周辺のキリスト教の一つの顔といった感じか)。しかし、久しぶりにお会いすることができた方々もおられ、わたくしにとっては、楽しい時であった。
 以下、わたくしの講演で配布したレジメを掲載。

戦後キリスト教の歩みと出版
──新たな宣教を切り拓く──


一 はじめに──70年の歩み
1.戦後71年は、世界と日本にとって、そして日本のキリスト教にとって、激動の時代であった。
・武藤富男『社説三十年 わが戦後史 第一部 昭和21年─昭和30年』
   キリスト新聞社、1975年(2016年)。

第一章 『キリスト新聞』創刊─お膳を作る─(昭和21─22年)
第二章 戦犯と贖罪─その言や善し─(昭和23─24年)
第三章 ラクーア音楽伝道と朝鮮戦争─走破八千キロ─(昭和25─26年)
第四章 新約聖書翻訳─希語と格闘する─(昭和27─28年)
第五章 アメリカ伝道─一万ドルの旅─(昭和29─30年)

2.戦後の新憲法下での新たな出発、キリスト教ブーム、安保闘争・大学闘争、経済成長・世俗化、教勢の停滞と高齢化、右傾化から排外主義、改憲
 平和主義の意義

二 キリスト教宣教とメディア
<マタイ28>
 16 さて、十一人の弟子たちはガリラヤに行き、イエスが指示しておかれた山に登った。 17 そして、イエスに会い、ひれ伏した。しかし、疑う者もいた。18 イエスは、近寄っ て来て言われた。「わたしは天と地の一切の権能を授かっている。19 だから、あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、20 あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。」

3.聖書とメディア
印刷 → ラジオ → テレビ・ビデオ → インターネット
宗教の伝達と自己表現の手段

4.宣教タイプの宗教
聖書と教えの継承と宣教、新しいメディアと共にキリスト教は歩んできた。その中に、キリスト教出版は存在する。近代社会のキリスト教にとっての出版。

5.神の言葉は変わらない、しかし、その形は変わる。形が変わることによって、神の言葉の不変性は可能になる。変わることによってのみ、変わらない。
 今の出版の形態は近代の産物。

三 現在の危機、出版とキリスト教
・現在・危機:キリスト教・教会、大学、出版、いずれにおいても、
・現状は厳しい、大都会はまだしも、地方は限界
6.現代日本の現実、大学を取り巻く状況
 ・科学技術・市場原理  ・大震災
7.大学の動向
 大きな変動を先取りした急激な改革 
8.この状況下での人文学・人文科学の役割
伝統・伝承の保存と現代への批判的視点の提供(危機を批判的に分析すること)。この二つの課題は相互に連関し合っている。
9.矢野智司(教育哲学・教育人間学)「序論:倫理への問いと大学の使命」
 京都大学連続公開シンポジウム「倫理への問いと大学の使命」(2007-2009年、4回)
・「共同体としての大学の衰弱」「大学は専門家を育成する「専門家の教育」の場にとどまらない」、「教養教育は.この「市民の教育」と「人間の教育」という異なる2つの次元の教育につながっている」(ii)、「理想主義やヒューマニズムに代わる教養教育の理念がなかったのだ」(iii)、「大学は資金というレベルにとどまらず、組織運営から教員管理に至るまで市場経済に組み込まれつつある。」(iv)
・「市場交換に還元できない「研究」と「教育」」、「真理への献身」(iv)、「次の世代に無償に「教える」という贈与のリレーが継承されていく。」(v)

10.軍事研究の誘惑、Dual Useという理屈。50年度、日本からノーベル賞は出るか?

四 未来へ──新しい宣教
11.出版は近代の所産であり、近代の行き詰まりとともに、近代の転換とともに、危機に陥っている。では、どうするか、キリスト教出版の未来は何か。
 近代の大衆文化は、グローバル化、ITの登場によって変化しつつある。マスから、全体包括的な形から(力道山、長島・巨人、紅白歌合戦的なテレビ文化)、より個別的な形(パーソナルなあり方)へ。より個別的なニーズへの適応が求められている。より細部にこだわった、個別的な要求に寄り添った出版、そしてITと相互の乗り入れを行うこと(事典や教科書における紙からの離脱)。

12.新しい発想における取り組みははじまっている
・ネットワークを作ること。
 環境に関して、ローマ・クラブの提言
 「持続可能な社会を唯一の方法ではなく、数ある方法のなかの一部」「ビジョンを描くこと、ネットワークづくり、真実を語ること、学ぶこと、そして愛すること」
・キリスト教出版の役割
ネットワークの結節点、つまり情報を人材を、知恵(企画)をあつめる。
・大学や地域ともっとコラボする必要がある。教会も出版も蛸壺から脱却できないところに未来はない。
・教会と地域(福祉):「教会と社会福祉」フォーラム21

13.夢:恒久的な研究所(ITと紙媒体を統合する)
資料を収集し利用可能にする・知の基盤
  同時に成立可能なビジネスモデルとして。

<参考文献>
1.西垣 通 『聖なるヴァーチャル・リアリティ』岩波書店、1995年。
2.生駒孝彰 『インターネットの中の神々』平凡社新書、1999年。
3.池上良正・中牧弘允編 『情報時代は宗教を変えるか──伝統宗教からオウム真理教まで』弘文堂、1996年。
4.芦名定道「インターネットの普及が新しい可能性を開いた──「広報」から見たキリスト教」『広報の専門誌 PRIR』2007. July. No.27、宣伝会議、22-23頁。
5.鵜飼秀徳『寺院消滅──失われる「地方」と「宗教」』日経BP社、2015年。
6.山下勝弘『超高齢社会とキリスト教──特に障害者・高齢者と共存する教会形成を考える』キリスト新聞社、1997年。
7.位田隆一・片井修・水谷雅彦・矢野智司編『倫理への問いと大学の使命』京都大学学術出版会、2010年。
8.ドネラ・H・メドウズほか『限界を超えて──生きるための選択』ダイヤモンド社、1992年。

 実は、上のレジメで、「13」は完全に飛ばしてしまった。それでも、内容を詰め込みすぎたようにも思われる。90分授業の感覚のせいか?
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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