ヘレニズム世界とキリスト教

 講義などで、キリスト教の歴史を扱う中で、ローマ帝国の国教化に至る過程における変化、つまり、ヘレニズム世界でキリスト教が変化することについて、いくつかの論点から考えさせられることがある。それぞれの論点はばらばらに見えて実は相互に関係し合っているのではないか。これが現在のわたくしが抱いている、2世紀から3世紀のの古代キリスト教父時代の動向である。
 もちろん、この研究領域の専門研究者で立場からは、既存も研究に大きく依拠する事にならざるを得ないわけであるが、この発想は、次の文献に示唆を受けたものである。

ハンス・キュンク
『キリスト教思想の形成者たち──パウロからカール・バルトまで』   
新教出版社。

 特に、今回の2世紀から3世紀にかけての変化については、キュンクのオリゲネスの議論が参照できる。キュンクは、それを「キリスト論におけるパラダイム転換」あるいはキリスト論の「重心移動」として論じている。

 新プラトン主義的に刻印されたヘレニズムの影響の下で、問題的な「重心移動」
・神と人間の間の根本的な二元論(旧約聖書にも新約聖書にもない)と、この無限の差異を、「神人」キリストを通して乗り越えること。
・キリスト教神学の中心:イエスの十字架と復活 → 受肉
                 イースター           クリスマス
=「キリスト論におけるパラダイム転換」(キュンク、92)

これは有名なクルマンのクリスマス論とも重なる。
「紀元後三世紀までのキリスト教徒は、一二月二五日をクリスマスとして祝ってなかった。キリスト教徒は、四世紀の初頭まで、後にキリスト教会の重要な祝日となるこの日に、集まって礼拝を捧げることもなく、キリストの誕生を話題にすることすらなく、他の日と何の変わりもなく静かに過ごしていた」(O・クルマン 『クリスマスの起源』 教文館、7頁)。
「いつ、どこで、なぜ、他ならぬ一二月二五日に降誕祭が行われるようになったか。これらの問いについて、学者たちはまだ完全な合意に達していないが、年代は三二五年と三五四年の間、場所はローマであることは、ほぼ確実であると考えられている」(37)。

さらに、以上は、次のようなキリスト教修道制の歴史的展開とも関連し合うことになる。
 ・エジプト → 東方教会(正教) → 西方教会(カトリック)
 この西方教会における修道制内部での変化で興味深いのは、クリュニー修道会の動向である。
 クリュニー修道院(910-)
修道院の世俗化の進展に対する修道院改革運動(11世紀のグレゴリウス改革との関
係は議論が分かれる)。『ベネディクト会則』の遵守。
  第二代修道院長オドー(926-942):教皇レオ七世の特許状によりクリュニー
  は教皇直属→991年には司教権を排除、修道院の強大な系列的組織化(修
  道会、第五代修道院長のオデロー)。
 このクリュニーで有名なのが、マリア崇拝(5世紀にビザンツで現れ、シリア、エジプトに普及、ローマには7世紀)の普及と荘厳さな典礼(音楽)の成立。
 マリア崇拝がキリスト教のローマ帝国での国教化のあつの時期に東方教会に遡るという議論は、それ以前のキリスト教のヘレニズム世界での変化がここにも連関しており、それが修道制の展開にともなって、西方へと伝播したという可能性を示唆するように思えてくる。
 ここから、浮かんでくるのは、次のポイントである。
 
 クリスマス伝承は元来は中心的な位置を占めていなかった。それが重要な位置を獲得するのは、古代教父時代、3世紀ごろから。
 これは、ヘレニズム世界にキリスト教が受容される過程で(これが国教化を可能にする状況形成と関わるはず)における、キリスト論における受肉論への重心移動と連動している。
 マリア崇拝もこの文脈にある。またさらに、これは、東方教会から西方教会へ伝播、修道制の展開とも重なる。

 以上は、クリスマスの季節に、先日の研究発表を聞きながら考えたことである。いずれ、もう少し、本格的に考察を行ってみたいテーマでる。
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