贖い論・考

 贖い、復活、これらは、キリスト教の基本的な思想に属するものである。しかし、同時に、その意味内容の理解は、特に現代人にとって、決して容易ではない。本ブログでは、これまでこれらに関して、若干の「研究メモ」を掲載してきた。今回は、「贖い」について、一つの考察を行いたい。

 そもそも、ある人が他者の罪を贖うというのは、いかなる意味で可能なのだろうか。近代的な罪・罰の思考からは説明困難な問題がここにある。だれかの罪を代わって背負うことは、原理的に可能なのか、また「背負う」とはいかなる事態なのか。疑問は尽きない。しかし、これらの難問に答えることは今回の意図ではない。
 ここで参照したいのは、旧約聖書のアブラハム物語の中にあるソドムとゴモラをめぐるアブラハムと天使・主とのやりとりである。

主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」22 その人たちは、更にソドムの方へ向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。23 アブラハムは進み出て言った。「まことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町全部を赦そう。」27 アブラハムは答えた。「塵あくたにすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人足りないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない。」30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれをしない。」31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
(創世記18:20-33)

 10人の正しい者が、ソドムとゴモラの罪を贖うことができると考えてはどうだろうか。これは、いわば正しい者の作るネットワークに入る人はその罪が贖われるという、と解してはどうだろうか。つまり、罪や救いは個別性の事柄(その本人の問題であり、他者がそれによって代わることはできない)であるだけでなく、共同性の事柄でもあるという議論である。これは、「人格性」が、個別性と関係性の両極性によって成り立つことを根拠としていると考えてもよい。
 
 もし、以上のように考えることが可能ならば、イエスの十字架によって人類の罪が贖われた、とは、次のように意味に解釈できることになる。イエスを起点に張り巡らされた救済のネットワークは人類を包括する、と。イエスが支えるネットワーク、これが贖いの意味ではないだろうか。まさに、このネットワークは奇蹟的な贖いを引き起こすことになる。
 とすれば、この救いの共同性は、「神の国」を指し示す共に、それが成立するのは、「この世」において、ということになる。おそらく、「この世」の意味は、このように解すべきものなのだろう。

 以上は、ある日(数ヶ月前?)の早朝に考えたことである。
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