文化の神学9

 「文化の神学」で音楽を論じる場合、さまざまな基礎的な考察が必要になる。たとえば、「音」の問題である。そして「音」をするとき、さまざまな問題が浮かび上がってくる。
 たとえば、近代社会は、「音」という観点から論じることができるだろう。近代社会の特徴は近代都市において見いだすことができるが、そこで注目すべきは時間の共有(共通時間)であり、それは、当初は「音」を介して設定された。時を告げる時計台の鐘の音である。
 つまり、「前近代の舞台においては、しかしながら、時間と空間は場所の状況拘束性を通して結びついていた。・・・大半の人々にとって、そして多くの日常的な活動において、時間と空間は本質的に場所を通して結合した状態が続いていた。」(アンソニー・ギデンズ 『モダニティと自己アイデンティティ──後期近代における自己と社会』 ハーベスト社、18)
 しかし、近代へ移行する過程で、この状況拘束性からの「切断」が生じる。「その切断は、社会活動がかならずしも特殊な場所へ準拠することなしに調節するために、時間と空間を再統合するための基礎となるものである。モダニティの重要な特徴である組織は、分離された時間と空間の再統合を抜きには理解不可能である。」(19)
 ここには、「音」の変化が存在し、その意味を真に理解するには、近代以前の中世の「音」、音楽に注目する必要がある(たとえば、その点で、ジョルジョ・アガンベン 『いと高き貧しさ──修道院規則と生の形式』 みすず書房、における、修道院の共同性と時間秩序との関わりついての議論は示唆的である。ここにも「音」の問題がある)。

 実は、ここまではいわば前置きであり、取り上げたいのは、次の文献である。

上尾信也
『歴史としての音──ヨーロッパ中近世の音のコスモロジー』
柏書房、1993年。

序章 音のイメージとストーリー
第一章 楽譜──音の記譜法
第二章 楽器のシンポリズム
第三章 「音楽家」とは誰なのか──「賤民」芸人と芸術家の狭間で
第四章 音のドラマトゥルギー──祝宴とプロセッションの音世界
第五章 流行としての音楽──ポピュラー・ミュージックの歴史
第六章 つくる文化・売る文化・きく文化──音と音楽の近代化と神話化
第七章 音の異能生──歴史のなかの音のイメージ戦略

あとがき
古楽器の系譜
文献目録
主要人名・作品索引

 こうした歴史研究が、中近世研究に大きな厚みを与えることになった。キリスト教史研究はまだその成果を十分に消化できていないのではないか(少なくとも、日本では)。
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