『福音と世界』 から

『福音と世界』 2017. 2(新教出版社)が届きました。本日は、センター試験前日のため、授業はありませんが、別件の仕事が詰まっており、なかなかゆっくりもできません。

 宗教改革500周年を迎える2017年。『福音と世界』は前回から「宗教改革」特集なっており、今回は、「義とは何か」、つまり信仰義認論をめぐる問題がテーマです。宗教改革の基本精神とも言うべき事柄であり、さまざまなアプローチが可能であるとともに、本格的な思索が必要である、そんな問題です。ルターに即して、また聖書との関わりで、そしてより広いコンテクストで、といった特集になっているようです。
 今回収録されたのは下記の論考。

・「ルターの信仰義認論──「隠された神」との関連で」 (竹原創一)
・「新約聖書の「義認」」 (吉田忍)
・「旧約聖書と義」 (池田裕)
・「「信仰義認」とジェンダー正義──宗教改革によって変わらなかったものを問う」 (吉谷かおる)
・「信仰告白のかたち」 (島しづ子)
・「ぼくの頭を押さえつけるその手を引け──不正義から正義へ」 (林巌雄)
・「新約聖書・初期キリスト教における「信徒」と「教職(制)」について」 (村山盛葦)

 信仰義認論の思想史的な分析をするとどうなるだろうか。あるいは宗教学的分析や宗教哲学的議論も当然必要である。とりくむげき課題は多い。
 
 特集に続き、次のインタビュー記事が掲載。
・ベルトールト・クラッパート「グローバリゼーションとキリスト教の課題」
 現代世界の暴力と貧困とグローバリゼーション/脱原発という課題/現代人の意味喪失/極右勢力の台頭は恐れるに足りない/パレスチナ問題を解決するために/民主主義と小さな運動、そして教会/宗教改革の遺産と現代の信仰

 9月に来日したクラッパート教授のインタビュー。たしかに、バルト、ボンヘッファーのラインに立つ神学者だけのことはある。

 次に、連載(ほんの一部ですが)から。
 わたくしが担当の連載「現代神学の冒険──新しい海図を求めて」は、五回目ですが、今回から、序論的考察を終え、本題に入ることになります。が、今回は、第二番目のセクションの導入・方法の議論「聖書の社会教説から社会科学へ」です。その趣旨は、キリスト教思想を論じる上で聖書が起点・基準になるということ、組織神学と聖書学との関わりについて本格的な考察が必要であると言うことです。いずれも、当たり前の話と言えば、まったく当たり前のことではありますが。聖書から社会科学へ、という議論の組み立ては、自然神学の社会科学への拡張=キリスト教的知と社会科学との接続という構想を具体化するものです。この後、連載は、政治学・経済学・環境学との連関で、現代神学の海図の概要を描き(ここまでが第二セクション)、そして具体的な諸問題へと進みます。

・吉松純:アメリカの神学のいま4 「初期アメリカ教会史考察」
 アメリカ・キリスト教史としては、森本あんりさんのコンパクトではあるが、的確な著書が存在するが、この連載では、寛容性と件主義という切り口でアメリカ教会史を捉えているようです。
 
最後に、いつものように次の連載を取り上げます。
・内田樹「レヴィナスの時間論」:「『時間と他者』を読む23」
 今回は、「自己同一性」しかも「自己同一性であることの不快」というレヴィナスの議論です。

 自己合一性、観照的主体、「光の孤独」、対象が出来する「地平」の先駆的把握。
 「主体はおのれ自身から由来するものしか出会うことができない。「他者」と出会うことがない」。「おのれが意味を付与した事物の意味を再発見することしか許されない」。
 「実存者は孤独である」。
 という現象学的な思惟にきわまる西欧哲学の特徴を取り上げたあとで、議論は「位相転換」(実存者と〈実存すること〉の関係)へと議論は進んで行くが、さしあたりは、現在と現前との意味像の理解する困難さで、今回の議論は終わる。 

 「意味」「地平」は、現代哲学のキーワードであるが、同じ用語が、今回問題となる現象学と解釈学では大きく異なっている。知の明証性・確実性をいう基点を有する強みが孤独という対価を払うことになり、他者のアポリアに至る現象学と、曖昧さに囚われつつも廻り道しつつゆっくり理解を構築してゆく解釈学。この二つは、相補的として片付けることができるのか。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR