記憶・追悼・戦没者祭祀

 ポストモダンという言葉が目立ち始めたころから、記憶、追悼、戦没者祭祀という問題が、思想のさまざまな領域で問われ始め、現在に至っている。その間に、日本では、戦後70周年を迎えるなど、この一連のテーマは、リアリティをもって論じられてきたと言える。もちろん、記憶、追悼、戦没者祭祀は、日本に限らない問題であり、古代から繰り返し問い直されてきたものである。しかし、近代の国民国家の成立は、これらの問題に新しい位相を付け加えることになり、現代の問題状況は、それによって色濃く規定されている。

 こうした問いに向き合うことは、特に宗教研究においては、重要な課題であるとともに、困難な問題である。参照すべき問題領域は多様であり、必要とされる方法論も多岐にわたるからである。

 今回紹介するのは、こうした課題に取り組んだ優れた研究成果である。

粟津賢太
『記憶と追悼の宗教社会学──戦没者祭祀の成立と変容』
北海道大学出版会、2017年。

はじめに──本書の対象と方法

第Ⅰ部 理論編
第一章 集合的記憶のポリティクス
第二章 儀礼国家論と集合的記憶──集合的記憶の社会学構築のために
第三章 現在における「過去」の用法──集合的記憶研究における「語り」について

第Ⅱ部 事例編
第四章 偉大なる戦争──英国の戦没者祀における伝統と記憶
第五章 古代のカノンと記憶の場──地方都市における戦争記念施設
第六章 市民宗教論再考──米国における戦没者記念祭祀の形態
第七章 近代日本ナショナリズムにおける表象の変容──埼玉県における戦没者碑建設過程を通して
第八章 戦没者慰霊と集合的記憶──忠魂・忠霊をめぐる言説と忠霊公葬問題を中心に
第九章 媒介される行為としての記憶──沖縄における遺骨収集の現代的展開

おわりに──慰霊・追悼研究の現在

あとがき
参考文献一覧
事項索引
人名索引

 粟津さんとは、南山宗教文化研究所のプロジェクトなどでご一緒したことがあるが、その粟津さんの2000年代の研究と、2006年に創価大学大学院文学研究科に提出の博士学位請求論文が元になった研究書とのことである。膨大な労力と時間が背景になった高度に学術的な研究であり、日本における宗教研究にとって、注目すべき研究成果と言える。
 記憶と語りは、いわば流行のとも言えるテーマであるが、豊富な事例研究に支えられた研究は決して多くはない。 
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