『福音と世界』 から

『福音と世界』 2017. 3(新教出版社)が届きました。本日午後と明日は、研究会が続きます。現在、宗教哲学・否定神学に関する論文集を共同で翻訳を進めつつあるのですが、その作業の一環です。今年度中には、出版社へ原稿が送れるところまでこぎ着けたいと考えていますが、今月と来月がポイントです。

 宗教改革500周年を迎える2017年。『福音と世界』は前回から「宗教改革」特集なっており、今回は、「正統と異端」の問題です。キリスト教会において、正統と異端がきわめて重要な意味をもった時期がいくつかありますが、その内の一つが、宗教改革から17世紀頃までの時代です。実際、多くの殉教者が生まれました(この同時期、日本ではキリシタン時代を迎えており、こちらも殉教者の時代です)。古代の正統と異端の問題状況との相違を含めて分析するならば、宗教改革理解は格段と深まるかもしれません。古代の国教会と、近世の国教会との相違はかなり重要な問題です。

 今回収録されたのは下記の論考。

・「アルミニウスに対する異端宣告をめぐって」 (木ノ脇悦郎)
・「曖昧になる「正統」と「異端」の境界──宗教改革後の再洗礼派と近世ヨーロッパ社会」 (永本哲也)
・「マルキオン聖書再考──異端反駁文書に書かれないこと」 (筒井賢治)
・「異端とセクシュアリティ」 (朝香知己)
・「多様性の時代と「異端イジメ」の病理──北村慈郎牧師戒規免職の底流にあるもの」 (渡辺英俊)

 正統と異端という問題は、一度きちんと整理しておく必要がある。
 
 今回は通常の特集に続き、二つのこの時期に関わる短い特集が組まれています。
「日本基督教団の戦争責任告白から50年 アジアからその意味を振り返る」
・「日韓キリスト教関係史における戦争責任告白の意義」 (徐正敏)
・「教団戦責告白から思うこと わたしが置かれた「」文脈」から」 (長尾有起)

「東日本大震災から6年 現代の課題」
・「神の国をキラメキを見ながら」 (柳谷雄介)
・「そこに生命があるから」 (片岡輝美) 

 次に、連載(ほんの一部ですが)から。
 わたくしが担当の連載「現代神学の冒険──新しい海図を求めて」は、六回目。今回から、第二番目のセクション「聖書の社会教説から社会科学へ」に入っていますが、前回がその導入で合ったのに対して、今回からが本題です。第1番目の話題は、「現代神学と政治」です。もちろん、各論的に重要な問題はさまざまなありますので、それらについては、今後の別のセクションで扱うことにして、今回は「海図」のための大づかみな話です。現代の政治哲学がキリスト教思想と隣接していること、現在活発な議論が展開されつつあることが、伝わればと思います。キリスト教思想は、隣接の多様な分野とのコミュニケーションを必要としているということの実例です。

・吉松純:アメリカの神学のいま5 「コンテクスチュアル神学2 フェミニスト神学」
 アメリカ神学の特徴的な典型の一つがフェミニスト神学ですが、とくにリューサーとラッセルが取り上げられています。フェミニスト神学の第1世代と言ったところでしょうか。アメリカでのフェミニスト神学のイメージは、このようなものなのでしょうか。
 
最後は、次の連載。
・内田樹「レヴィナスの時間論」:「『時間と他者』を読む24」
 今回は、フランス語・フランス人における「le présent」のイメージ化の特質の議論から、レヴィナスの議論がなぜ難しいのかが論じられ、フッサールの現象学的判断中止(エポケー)へ言及しつつ、「解釈上の最大の難所」で、議論は次回へとなります。

「同一語が最初の方は「現前」として読まれ、続く箇所では「現在」として読まれる。・・・フランス語の話者たちは、この文の主語である一語を、そのつど周囲に配置されている他の語とのかかわりに応じて、あるときは空間的に、あるときは時間的に表象することで、わたしたち日本語話者には非常に見えにくい論脈を脳内で自力で繋げて読んでいる。そう考えるといくぶん話が通ってくる。レヴィナスの書いていることの意味がそれでわかるというものではないが、どうしてレヴィナスがこんなにわかりにくいのかの理由が少しだけわかる。」(62)

「フランス語話者がprésentという文字を見て自動的に脳裏に描くものとは違うものを観念できない限り、彼らは西欧形而上学の閉域のうちにとどまり続け、光の孤独のうちに幽閉され、ついに時間も他者も理解できないだろう、とレヴィナスはそう述べているのである(たぶん)。」(63)

「無反省に感知されたものに対してその妥当性をいったん保留するkとお。眼前に与えられている客観的世界に対する態度決定の有効性を宙吊りにすること。それをフッサールは「現象学的判断中止」と呼んだ。レヴィナスが求めているのはそのことである。」(63)

 議論は、同一の事態をさまざまな仕方で論じつつ、前に進んでいる。確かにレヴィナスは読みにくい思想家である。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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