初期キリスト教について

 イエスの宗教運動から初期キリスト教(以前は原始キリスト教といわれた)にかけて、最初の1世紀のキリスト教の成立に向かう歴史は、その後のキリスト教を論じる基点となるものであり、その理解抜きに、キリスト教を論じることは難しいように思われる。それだけに、キリスト教を講義することを長年やっていると、この時期のキリスト教について、もちろん専門の聖書学者ではないが、それなりの学問的な見解を検討し、話すことが必要になる。
 最近のわたくしも感覚としては、キリスト教という歴史的運動体が制度化される形で成立するのは、70年代以降、おそらく80年代のころではないかと考えている。とすればそれまでの半世紀ほどの初期キリスト教は、ユダヤ教からキリスト教の生成過程・過渡期ということになり、ユダヤ教イエス派としばしば言われるのは、そのことを際している。なぜ、80年代かと言えば、キリスト教の成立の前提が、第一ユダヤ戦争におけるユダヤ人の徹底的な敗北と、それまでむしろ傍流であったパウロ的キリスト教が、キリスト教のその後の展開の思想的基盤を提供したことに、何よりも、ルカ文書に成立する、キリスト教起源神話(バートン・マック)がその全貌を現したこと、そして、「キリスト教徒」という名称の登場したことなどが、80年代の成立を指し示しているからにほかならない。
 そして、このキリスト教の成立過程は、その後の歴史も同様なのであるが、単線的な発展過程ではないということである。むしろ、イエスの宗教運動の段階からすでに、運動体は多元的であったと考えるべきであるように思われる。後に発展段階から、その段階での主流の視点から歴史が振り返られるときには、それはあたかも単線的なプロセスのように描かれるが、詳細に分析するならば、そこには、多元的な状況が織り込まれていることが確認できる。
 こうした初期キリスト教の歴史像は、現代の新宗教の生成発展過程と重ねるならば、さらに蓋然性が高まると思われる。

 以上は、現代の新約聖書学を参照しつつ、まとめあげたものであるが、こうした点については、次の文献が手引きになると思われる。

佐藤研
『聖書時代史──新約篇』
岩波現代文庫、2003年。

 初期キリスト教は専門の研究を行うことは大変であるが、きわめて魅力的なテーマである。
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