『学術の動向』 から

『学術の動向』 2017. 4 (日本学術会議)が届きました。
 今回も、二つの特集による構成ですが、いずれも、福島原発事故に関連したものです。福島原発事故は、継続的な取り組みが必要なテーマであり、時間が経過して忘れられるということで、すますことができる問題ではありません。

【特集1】福島原発災害後の環境と地域─放射線の影響に関する研究を中心に─
・「原発災害が被災住民にもたらした精神的影響」 (辻内琢也)
・「福島第一原子力発電所事故の緊急・復旧作業員等の被ばくと健康調査」 (吉永信治)
・「福島県でのリスクコミュニケーションと健康対策欠如─医学的根拠に基づいた放射線の人体影響とは─」 (津田敏秀)
・「放射線の農産物への影響」 (二瓶直登)
・「原子力災害と福島県農業の再生課題」 (小山良太)
・「放射線測定から見た復興」 (小豆川勝見)
・「被災住民と被災者が抱える健康不安」 (清水奈名子)
・「原発事故の精神的影響と放射線の健康影響─「過剰な放射線健康不安」を強調する見方の偏り─」 (島薗進)
・「「福島原発災害後の環境と地域社会」の特集にあたって」 (渡辺芳人)

 「健康対策の欠如」は、災害の非現実的な矮小化であり、現実(まだまだ続く、しかもそれからが山場)を忘れたい・責任を負いたくないという願望の投影と言うべきだろうか。少なくとも学問・科学は現実逃避であってはならない。宗教研究の分野からの島薗先生の論考は心強い。「過剰な放射線健康不安」を強調する見方の偏り、という問題は、重要である。島薗論文は、次のように締めくくられている。
 「そもそもこうした問題の議論を、放射線健康影響とか保健物理とか核医学とかいった領域の専門家に委ねていることが不適切である。人文社会系を含めた広い範囲の科学者・学者の参加によって多角的な調査研究と考察がなされるべきである。」今からではあまりに遅いと言われるかもしれない。だが、今からでもできることは少なくない。」(55頁)
 だから、「市民の科学」が必要なのである。

【特集2】原発事故被災長期避難住民の暮らしをどう再建するか
・「強制避難者の自主避難化を避けるために─原災避難待機制度の確率と住宅費補助の継続─」 (山川充夫)
・「原発事故後における福島県相馬地区住民の健康について─相馬・南相馬市の健診結果から」 (坪倉正治)
・「帰還と移住のなかで」ゆらぐ原発事故被災者コミュニティ─大熊町を事例として」 (吉原直樹)
・「原発災害避難住民の「二重の地位」の保障─「生活の本拠」選択権と帰還権を保障する法制度の提案」 (岡田正則)
・「9.19シンポジウムの参加者意見から見えてきたこと」 (町村敬志)
・「9.19シンポジウムを踏まえて」 (春日文子)

 「生活の本拠」選択権と帰還権に基づく「二重の地位」の法的な保障。なるほど。軽い発言を乱発する政治家にも、しっかり現実を見て考えてもらいたい。
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