日本における組織神学の試みから5

 これまで組織神学について、教義学・倫理学・弁証学といった、全体体系構想を取り上げてきた。組織神学には、神学体系の具体的構築とともにそれと関連したさまざまな作業・著作が存在する。たとえば、『神学概論』と呼ばれるものである。しばしば巨大な知的構築物になる組織神学体系をいわば概観しその全体像をコンパクトに提示するものである(コンパクトとは言っても、多くは立派な単著となる)。しばしば「概論」というと(例えば、わたくしの場合で言えば、キリスト教学概論)、初学者向けのかみ砕いた全体像の提示といったイメージがあるかもしれないが、確かに明解な仕方で全体を示すのはその通りとしても、それを具体的に行うのは、かなりの講義の積み上げが必要になる。わたくしの感覚では、概論講義は、若手の教員の役割ではなく、その学科に責任を負っている教授の役割と言うべきである。
 したがって、「神学概論」には、神学のエッセンスが凝縮して提示されることになる。たとえば、わたくしの手元にある、日本における神学概論として、次のものがある。

1.桑田秀延『基督教神学概論』(1941年。『桑田秀延全集1』キリスト新聞社)
 この概論は、現在も、組織神学を学び始める者は一読すべきものである。わたくしは、父親からこの著書を譲り受け、文学部に転学したころに読んだ記憶がある(もちろん、それは手元にある)。

2.熊野義孝『神学概論』『熊野義孝全集』第四巻、新教出版社) 
 この全集第四巻は、タイトルが「神学概論」とされているが、全体が一冊の神学概論ではなく、神学概論に関連した複数の著作が合わせて収録されたものである。したがって、厳密には、本ブログで今回取り上げている「神学概論」ではない。収録されたのは、「キリスト教要義」(1935)、「キリスト教通論」(1935年)、「神学諸科解題」(1952年)、「キリスト教概説」(1962年)、「福音主義神学論」(「かなり年代も広く拡がった七つの重要論文」からなる)、「キリスト教と諸宗教の問題」(1963年)である。

3.佐藤敏夫『キリスト教神学概論』(新教出版社、1994年)
 これは、「1」を意識し、それを受け継いだものと言える。これは「序言」の冒頭に書かれた通りである。ここで確認しておきたいことは、この序言にある「本書の神学的立場はまず福音主義である」という点である。具体的には、植村正久、高倉徳太郎のラインである(佐藤は、明治の福音主義として、小崎弘道と内村鑑三の名もあげているが)。さらに言えば、バルトである。これは、組織神学が神学の「組織」的な提示を行う際に、特定の体系化の原理(立場)を必要とし、それは歴史的には教派的立場として存立してきたことを示している。教派的神学的立場がゆらいでいる現代において、組織神学がいかなる意味で可能かは重要な研究テーマとなる。ともかくも、この神学概論は伝統的なスタイルにおけるものであり、しかも、優れた概論と言える。しかも、現代の新しい進学状況を意識している(「メタファーとストーリー」論を取り入れているなど)。また、次の序言の言葉も、熟考に値する。

「日本のプロテスタント神学は、桑田先生だけでなく一般に、宗教性豊かなドイツ観念論からほとんど学んでこず、ただバルトを含めた弁証法神学からそれに対する批判だけを学んだと言うべきである。」(iii)

 この状況は、その後、どうなったのであろうか。
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