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佐藤敏夫(6)

 佐藤敏夫の文化倫理関係の著作の3冊目です。今回は、近現代キリスト教思想における中心テーマの一つである、「歴史」をめぐり、神学、哲学、宗教学に広がる議論が取り上げられます。

佐藤敏夫
『永遠回帰の神話と終末論──人間は歴史に耐えうるか』
新教出版社、1991年。

まえがき


第一章 歴史の廃棄とそての祖型と反復
  一 祖型と反復
  二 時間の再生

第二章 歴史の不幸に耐える
  一 苦難の正常性
  二 周期理論と歴史

第三章 ヘブライ人における歴史と終末論
  一 神の顕現としての歴史
  二 終末に関するブルトマンの見解
  三 終末に関するブライトの見解
  四 モーヴィンケルにおける後期ユダヤ教の終末論
  五 終末論の本質(1)

II
第四章 レーヴィットにおける歴史の拒絶
  一 古代ギリシア人と歴史
  二 ヘーゲルにおける世界史の意味
  三 マルクスにおける世界史の意味
  四 レーヴィットと永遠回帰説

第五章 近代ドイツ神学と歴史幻想
  一 信仰の場所としての歴史
  二 歴史的発展とキリスト教
  三 歴史存在論から歴史認識論へ
  四 トレルチと近代ドイツ心学の破綻
  五 ポパーの歴史主義批判と近代ドイツ神学
  六 オーファーベックと原歴史

III
第六章 二十世紀の終末論
  一 終末論の台頭
  二 終末論の本質(2)
  三 ブルトマンの「今」「ここで」の終末論
  四 パネンベルクの普遍史的終末論
  五 モルトマンにおける約束の終末論

第七章 カール・バルトの終末論──エリアーデに触れながら
  一 原歴史と歴史
  二 三つのパルージー
  三 永遠なる歴史

IV
第八章 誤解されないために


あとがき

 以上、目次を紹介した佐藤の著書であるが、1980年代頃までの「歴史と終末論」の問題状況を手堅く概観したものであることがわかる。エリアーデとレーヴィットによる歴史・歴史的思惟への批判とバルト以降のプロテスタント神学における終末論の諸動向が、論述の骨子であり、それにトレルチやティリッヒが加えられるというスタイルである。
 本書から30年あまりが経過した現時点で、コメントすべきは、次に点である。

・1980年代以降、聖書学では、それまでのパラダイム(研究者の合意)であった「終末論(黙示的終末論)」への批判的検討が進展し、20世紀神学全体への見直しが、聖書学から開始されることになった。組織神学の議論もこの転換の影響を免れることはできないように思われる。組織神学にとって聖書学とは何かについて、本格的な議論が必要になっている。

・現代の環境論(キリスト教的環境論を含めて)は、従来の歴史的視点偏重への反省を提起している。歴史に対する地理・地政、時間に対する空間といった仕方での、新しい思惟のバランスが求められている。20世紀神学の時間と歴史への偏りは、修正が必要であろう。

・以上の動向は、キリスト教思想で問われる「歴史」概念整理を要求する。少なくとも、次の三つのレベルの歴史を区別ししつつ、その全体の連関を明らかにする必要がある。
1)人間存在の歴史性という意味での歴史
2)キリスト教思惟・聖書的思惟の特質と言われる意味での歴史(キリスト教以外の他の文化圏での「歴史」概念との差異が問題になる)
3)近代の歴史化という言われる意味での歴史、いわゆる歴史主義(エリアーデにおいて問われているのは、このレベルの歴史であろうか)
 整理されない議論は、いたずらに問題を混乱させるだけである。
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まとめtyaiました【佐藤敏夫(6)】

 佐藤敏夫の文化倫理関係の著作の3冊目です。今回は、近現代キリスト教思想における中心テーマの一つである、「歴史」をめぐり、神学、哲学、宗教学に広がる議論が取り上げられます。佐藤敏夫『永遠回帰の神話と終末論──人間は歴史に耐えうるか』新教出版社、1991年。...

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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、内容的にこの科研のテーマ(「自然神学・環境・経済」)に限定されない諸問題を扱うことが多くなったため、本ブログのタイトルと趣旨を変更したいと考えました。新しいタイトルは「自然神学・宗教哲学・自然哲学」となります。もちろん、これまで同様にさまざまな問題を取り上げます。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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