アジアの人口動態と地域経済

 現代の環境問題を考えるとき、その根本に人口問題が存在することはしばしば指摘される通りであり、高齢化や少子化は、環境、経済から、宗教まで多くの事柄を規定要因となっている。もちろん、現代世界が国民国家を基礎単位とすることから考えても、人口動態に関わる事柄は、基本的には政府が主導的な役割を果たすはずの問題であることは言うまでもない。しかし、日本において典型的に見られるように、そしてアジアの諸国でも同様にそうであるように、政府は万能ではなく、政府にすべてを任せることで問題解決を期待することの非現実性も否定できない。

 そこで、必要になるのが、「国家という枠組みから離れて、二つの視点から高齢化問題を捉え直す」ということである(大泉啓一郎『老いてゆくアジア 反映の構図が変わるとき』中公新書、174)。「第一は、高齢化は、それぞれが住む地域で生じる身近な問題であるという視点である。日本では、高齢者介護への対応を機に、福祉の担い手は国から地方へと移行しつつある。第二は、高齢化は各国が抱える国内問題とはいうものの、アジア地域のはねいに及ぼす影響が大きく、アジア各国が協力して取り組むべき国際問題でもあるという視点である。」(175)

 前者の視点は、地域経済・地域コミュニティという視点であり、従来の日本のキリスト教に欠落していた視点である。しかし、日本のキリスト教(あるいは宗教一般、そしてアジアの宗教)に求められているのは、この地域コミュニティとの積極的な関わりであることは、本ブログでも、特に日本と韓国の調査研究において意識された点であった。日本の宗教はすでに高齢化社会において存在し、大きな変容を経験しつつある。人口動態から見て、韓国と台湾も、この数年の内に高齢化社会の突入し、また中国も10年程度の内には同様の道を辿ることになるであろう。まさに「老いてゆくアジア」という現実が今や着実に進行中である。韓国のいくつかの教会はこうした事態に対応するかのような活動を進めており、こうした点も今後のさらなる研究調査が求められる。

 地域社会という視点が重要であるとして、その実態、今試みされていることを知ることが当然必要であり、次の文献はその点で興味深い。

松永桂子
『創造的地域社会 中国山地に学ぶ超高齢社会の自立』
新評論、2012年。

はじめに
用語解説

序章 超高齢社会の地域の自立
1 「過疎」の中国山地
2 「集中」「分散」政策と「過疎」対策
3 「創造的地域社会」の意味するところ

第1章 「地域自治組織」にみる新たな地域コミュニティ
1 地域自治組織の先進事例──広島県安芸高田市高宮町「川根振興協議会」
2 全国で増加する地域自治組織
3 地域コミュニティの新たなかたち

第2章 「集落営農」にみる地域ビジネスと地域扶助
1 増える集落営農
2 自治と産業の自立を目指す──広島県東広島市河内町「ファーム・おだ」
3 営農活動から福祉・交通事業まで──島根県出雲市佐田町「グリーンワーク」
4 「仕事」を創造し「公益」を追求する集落

第3章 農山村を引っ張る「女性起業」
1 農村女性が事業を始める動機と意義
2 「過疎」発祥の地での女性起業──島根県益田市匹見町の三つの取り組み
3 女性起業の経営のかたち
4 地域で働く女性たち
資料──半世紀前の匹見町の姿

第4章 「地域型社会的企業」の台頭──住民出資で自立に向かう
1 現代の地域課題と社会的企業
2 村民出資の社会的企業──占め値圏雲南市吉田町「吉田ふるさと村」を中心に
3 地域そのものがステイクホルダー

第5章 「産業福祉」という発想──道の駅と農産物直売所の進化
1 道の駅、農産物直売所の多面的な機能
2 出張産直・集荷に乗り出す道の駅──広島県北広島町の取り組み
3 well-beingの思想に基づく「産業福祉」の時代

第6章 地域産業政策の未来と自治体の役割
1 自治体は産業振興に力を入れつつある
2 農商工連携を意識した地域産業政策の新動向
3 政策に思いを込める──地域産業振興の新時代

終章 地域で仕事を創造する
1 「地域」と「帰属」の新たなかたち
2 「地域社会」はどこへ向かうのか

あとがき
参考文献
索引

 日本のキリスト教は「山村地域」から急速に撤退しつつあり、地方の教会は空洞化しつつある。この先にあるものは何なのだろうか。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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