宗教哲学と解釈学

 宗教哲学がいかなるものとして、いかなる仕方で構想できるかは、現代の宗教研究の大きな問いの一つである。なぜなら、現代のキリスト教思想において(むしろ、古代以来一貫して)明確に見られるように、宗教思想は錯綜した哲学との関わりにおいて形成され展開してきたいるからである。もちろん、「哲学」と一口に言っても、その内実は単純ではない。わたくしも、今年度の京都大学における特殊講義(大学院との共通ではなく、「学部生に向け」(?)の方)で、現代キリスト教思想研究(19世紀から21世紀)について講義してきており、後期からは、いよいよ1970年代以降に入る。その最初に取り上げるのが、「解釈学的神学と現代思想」であり、現代の思想的文脈で宗教哲学を論じる上で、解釈学をおえておく必要があると考えている。
 具体的に念頭にあるのは、学生時代から断続的に取り組んできたリクール、そして近年取り組みの度合いを高めつつある、ヴァッティモである(日本における代表的な論者である小田垣雅也氏や、ブルトマンについては、前期で扱った)。

 特に、ヴァッティモは、今まさに生産的な思索を展開しつつある思想家であり、また日本における紹介・翻訳も徐々に増えつつあるという点でも、不十分ながらも紹介すべきタイミングと思われる。この夏に翻訳出版された、ロヴァッティとの共編著である、『弱い思考』(法政大学出版局)は、ヴァッティモを特徴付ける「弱い思考」について、その問題意識と背景を知る上で有用である(ヴァッティモ自身の論考「弁証法、差異、弱い思考」はとくに)。イタリアの哲学思想における、解釈学(ハイデッガー、そしてニーチェ)とマルクス主義との交差は、現代思想の重要なトポスを構成しつつある。
 昨年、ザバラとの共著で英語で出版された、次の著作は、いずれ、何らかの形で取り上げたい文献の一つである。

Gianni Vattimo, Santiago Zabala,
Hermeneutic Communism. From Heidegger to Marx,
Columbia University Press, 2011.

Introduction

Part 1:Framed Democracy
1. Imposing Descriptions
Truth's Violence
The Conservative Nature of Realism
The Winner's History
2. Armed Capitalism
The Impositions of the Liberal State
Conserving Financial Recessions
Fighting the Weak

Part II: Hermeneutic Communism
3. Interpretation as Anarchy
The Anarchic Vein of Hermeneutics
Existence Is Interpretation
Hermeneutics as Weak Thought
4. Hermeneutic Communism
Weakened Communism
The South American Alternative
Chávez: A Model for Obama?

Notes
Bibliography
Index

 特殊講義の方は、解釈学の後、政治神学(シュミットとモルトマン、アガンベン、ジジェク)、フェミニスト神学、黒人神学、アジア神学(?)、宗教の神学、エコロジーの神学、と続く予定である。この特殊講義の目的は、キリスト教思想研究の多様なテーマ設定の概観し(4年で一つのサイクルをイメージしている。聖書思想、キリスト教史の古代から宗教改革、キリスト教思想の近代から現代、宗教哲学・倫理・アジアなどのトピックス。この点では、学部3回生から修士2回生まで4年間で一区切りとなるだろうか)、将来キリスト教思想研究に進むことを希望している学生に何がテーマになり得るかの手がかりを与えることにある。学部生を主たる聞き手としているので、日本語で読める参考文献をメインに進められるが、内容は、講義をするわたくしの関心のままにかなり自由に設定している。この点が、京都大学での特殊講義のよさ(?。講義する側から見ての)である。


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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
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