夏の終わり

 9月の三連休も本日が最終日であり、決して長くはなかったが、今年の夏休みも終わりに近づいた。今週から、教授会も非常勤講師としての仕事も開始され、後期の授業期間の通常のリズムに徐々に向かうことになる。

 この夏を振り返ると、近年集中的に取り組んできた仕事に決着がつき、研究面では一つの区切りとなったと感じられる。波多野精一の著作の岩波文庫化と、脳科学と宗教というテーマでの共編著の出版である。特に波多野の宗教哲学関連の著作の岩波文庫化は、今後も予定される論文などを含め、わたくし自身の研究に多くの副産物を生むことになった。自分が研究対象としている思想家については、その思想展開をめぐりな議論を行ってきたが、研究の展開・発展とは、内的な問題の深まりと外的偶然的な要因とが相互に結びつき影響し合って現象する、ということが自分の実体験として感じさせられた。本ブログで紹介の科研による研究も最終年度であり、そろそろ締めくくりが意識され、この点でも区切りである。

 以上の研究面での夏の過ごし方とともに、この夏に行った、趣味に関わることを記載していきたい。本ブログは研究をメインにしており、趣味的なことは避けてきた(?)わけであるが、たまには悪くないかもしれない。

 夏や春の長期の休みの際には、趣味の読書をまさに集中的に行うことにしてきた(最近はこれも時間的に難しくなってきているが)。学生時代からしばらくはロシア文学(ドストエフスキーの長編を中心に)、そして京都大学に赴任してきてからは、日頃読む時間のない(?)、ペリーローダン・シリーズ(早川書房)を、一年分まとめて読破することにしている。この数年一年分まとめてというリズムが維持できなくなり、今年の夏は、なんと375巻(『発信源グロスソフト』)から432巻(『眠れる女神』)までの60冊弱(一冊につき2話)を一挙に読んだ(どのくらいの時間がかかったかをご想像いただきたい)。

 こうした読書では、精読という形ではなく、気に入った話の展開を中心に読むことになるが、SF小説と分類されるジャンルについて若干の議論を行ってみたい(そのうちに機会があれば、文学とキリスト教の一環で、SF小説を取り上げてはどうかと考えている?)。

 SF小説、特にスペースオペラと呼ばれるものでは、善悪二元論的な構図が設定されることが少なくない。有名なところでは、E.E.スミスのレンズマンシリーズにおける、アリシアとエッドアとの関係であり、またヴァン・ヴォークトの『イシャーの武器店』などにおける、武器製造業者とイシャー帝国との関係も同様のもののヴァリエーションといえる。SF小説であっても、一つのテキスト世界を構想し展開するなかで、単純な善悪二元論ではすまなくなる。つまり、空想をも規定するリアリズムの存在であり、このリアリズムの物語化にこそ、長編SFのおもしろさの一端が存在しているのである。

 今回のペリー・ローダンシリーズでは、425巻後半「バルディオク」において、バルディオクの第四具象ブルロク
を通して超越知性体バルディオクの成立が語られる。これは、悪の由来の物語というべきジャンルの伝統に属するものであり、その観点から興味深い。現実の善と悪が錯綜した相互関係の由来を有すること、悪の現実化が弱さ・疑い・欲望、そして偶然性に規定され生成すること、巨悪も単純に悪ではなく、その救済が問われること、などなど。これはSF的な場面設定における悪論と言えるものであり、太古からの神話的思考に連なることがわかる。SF小説も、自由なイマジネーションにおいて人間の運命を掘り下げたものほど、独特のおもしろさが感じられる。

 SF小説とはいかないまでも(C・S・ルイスやトールキンは使えるであろうか?)、後期の授業の中では(非常勤講師としての講義であり、京都大学においてではない)、キリスト教と文学について、具体的な作品を取り上げながら、あれこれ話をする予定である。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
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