キリスト教学の射程、キリスト教はどの広がりで捉えるべきか

 わたくしが専門にしているキリスト教学という学問については、その学問論的基礎をめぐり様々な議論が存在し、これまでも少なからぬ議論がなされてきた(日本基督教学会北海道支部編『「キリスト教学」再考 日本基督教学会北海道支部公開シンポジウムの記録 2007年6月30日(土) 2008年6月28日(土)』、などを参照、わかくしも、ここで論文を執筆している)。
 最も単純化して言えば、キリスト教学とはキリスト教を研究対象とする諸学問の総体である、と述べることも可能であろう(実際、このように考えないと日本基督教学会などは理解不可能になる)。しかし、ここで直ちに生じる難問は、研究対象としてのキリスト教とは何か、どこまでがキリスト教の範囲か、という問題であり、これは研究に先だって厳密に規定できるものではなく、むしろ研究において変化し、研究の立場によって多様な理解が可能なもの、つまり、研究対象と研究との間には循環関係が存在しているのである。したがって、この問題は外見以上に複雑な議論を必要にするものなのである。

 これに関連して、次の問題についてどのように考えるべきであろうか。
・キリスト教を信じるということとキリスト教会に所属するということの関係。キリスト教信仰と教会出席行為との間に一定の相関関係が存在することは理解できるとして、両者はまったく同一なのか、と言われれば、答えは分かれることになるだろう。

・もし、キリスト教信仰と教会出席行為とが同一でないとすれば、ある地域ある民族にキリスト教が土着化するとはどのような事態と考えるべきであろうか。教会離れはキリスト教離れと単純に同一ではなく(相関関係はあるだろうが)、また教会が大きくなる(=会員数が増える)ことを、キリスト教信仰が充実していること、あるいはその地域でキリスト教が存在意義を発揮していることと同一ではないかもしれない。キリスト教あるいは教会は、どのような在り方を目指すべきなのか。日本のキリスト教は?

・近代の世俗化以前は人間あるいは社会は宗教的であり、近代以降、宗教は衰退しつつある、といった現代においては学的に根拠が疑わしい議論について、どのように考えるべきか。どこまでが既成宗教の衰退で、どこまでが宗教形態の変化なのか。

 問題は、いわゆる常識的な意見が素朴に主張するほど単純ではない。

 こうした点について考える上で、次の文献は参考に値するであろう。

Robin Gill,
Churchgoing & Christian Ethics,
Cambridge University Press, 1999.

Introduction

Part One: The Theological Context
1.Churchgoing and the bias of virtue ethicists
2.Churchgoing and the bias of sociologists
3.Four theories of chuchgoing

Part Two: The Evidence
4.The British Household Panel Survey
5.Faith in British Social Attitudes surveys
6.Moral Order in British Social Attitudes surveys
7.Love in British Social Attitudes surveys

Part Three: The Implications
8.Churchgoing and Christian Identity
9.Churchgoing and moral disagreement

Postscript
Works cited
Index

ギルは、日本でも邦訳書『神学と社会学の対話』(ヨルダン社)などで紹介されている研究者であり、イギリスにおいて(ケント大学)、キリスト教倫理と宗教社会学とに関わる研究領域で活躍し現在至っている。
 本ブログで、キリスト教思想と社会科学との関わりを具体的に考える上で、一つのモデルケースとなる。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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