予定の再調節──「天災と人災の間」

 以前に9月2日の本ブログで、2012年度後期の本ブログに関していくつかの取り上げるべきテーマ(「科学技術とキリスト教」「聖書と経済」「天災と人災の間」)を示した。その後、様々な文献紹介などを行う中で、特に「天災と人災の間」について、議論を整理し、方向性を再確認する必要性が感じられるので、今回は、その作業を行いたい。なお、今回のような再確認・再調節は、研究計画を実際に実施する中で繰り返し必要となる作業である。経験上、研究を中長期で進める場合(たとえば、博士論文の執筆など)、研究の進展に合わせて、方向性や方法論や、実施手順などを柔軟に調節することは必要不可欠の作業となる。10年前の研究計画を変更なしにそのまま実施し続けることは稀であろう。

 「天災と人災の間」は「研究メモ」のカテゴリのサブカテゴリとして設定したものであり、3.11以降の状況で問題化した「自然災害」がキリスト教思想にいかなる問題を投げかけているのかを継続的に、できれば一定程度系統的に検討することを目的としている。

 これまでの議論は次の2点について、行われた。
・自然災害という事態について、それを神との関わり、人間の関わり、という二つの視点から考える際の一つの議論のモデルとして、エデン神話を取り上げることが出来る。エデン神話は、キリスト教では「原罪」を論じる基礎テキストであるが、むしろこれは、起こった悪の出来事をめぐる神話的語りとして位置づけることができる。そのとき、この出来事に関わる4つの存在者(「神」を含め)のそれぞれの位置がすべて問題化し、それによって、神義論を含む伝統的な悪論の主要な思惟の源泉になってきたことがわかる。
 自然災害は、語りとしての「神話」という問題にも関わる。

・自然災害(自然悪)は、しばしば神義論的問いを生じ、キリスト教思想に困難な問題状況を帰結してきた。この場合に、問われているのは、一見すると災害の「原因」であるかのような印象を受けるわけであるが、神の存在論証の場合がそうであるように、問われているのは、原因ではなく、むしろ「理由」と言うべきではないか。こうした文脈で現れる「原因」という用語は、厳密な意味での概念ではなく、むしろ隠喩として理解されるべきであり、こうした問いを提起する者は、どのような原因の説明には実は納得しないのではないかと思われる。問題は、理由をいかに物語り、どのような了解へともたらすか、ということになるのではないか。

 以上から浮かび上がるのは、「神」とは何か、神とは世界との関わりで何者かという問題である。神は自然災害といかなる関係にあるのか、神の責任とは、あるいは神は存在するのか。神について、形而上学的な概念構成を行い、全知全能にして善なる絶対者と規定し議論をはじめると、当然アポリアから脱出不可能になる。おそらく、こうした議論を整理して考える上で、これまでのキリスト教思想の伝統的遺産を繰り返し読み直す作業が必要になるのではないだろうか(ヴァッティモ的には「わたしたちが遺産として受けとってきたものにたいするピエタースの力」に、その弱き力に頼るということである)。

 現時点で念頭にあるのは、摂理と自由という古典的な問題系であり、またの背後にあるのは、権威と権力、オイコノミアと栄光、多と一、という問題群である。考える手がかりは少なくない(あるいは多すぎる)。また、結論をいつまでに出さねばならないということではなく、まだ出すことが可能なのか、期待されるべき「結論」とはそもそも何か、といったことを含めて考えねばならない。

 考察はブログのスピードで断続的に少しずつ進められる。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
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