波多野の思想史研究(9)

「第七章 ピュタゴラス及びピュタゴラスの徒」

 今回は古代ギリシア宗教思想でも最も興味深いテーマの一つである、ピュタゴラス教団・学派が取り上げられる。この教団の実態・思想内容を分析する上では、文献的な制約困難が存在するが、波多野は、一方ではオルフィック教との関わり、他方ではプラトンとの関連を念頭において、議論を行っている。ここにも、神話から哲学へという展開の一つのポイントが存在する。


1.ピュタゴラスとピュタゴラス教団について
・Pythanoras, 570年頃~500年頃。サモスの人、南イタリアのクロトンに移住、そこに宗教的団体を設立。一時、クロトンを支配するほどの勢い、しかし反対党の陰謀によってほとんど全滅し、生き残った僅かな教徒がギリシアの諸地方に離散(74)。
・ピュタゴラスは音楽と数学を重んじる。学問的傾向。前4世紀においては宗教的傾向を圧倒。学者乃至哲学者の一派としては、プラトンのアカデメイアの勃興とともにそれに吸収、宗教団体としては、紀元前1世紀に再び新たな活動をはじめた(75)。

2.オルフィク教との対比から
・其の崇めた神がアポロンであったにもかかわらず、「真髄において特質においてオルフィク教徒のそれに類似した」、「オルフィク派の教説より、宗教生活に直接関係のある部分を残し神話的宇宙論を引き去ったものと、主要な点において全く一致した」(75)。霊魂の本質と運命とを明らかにして救済の道を示す。
・霊魂と輪廻:元来不死なる神的実在、いずれの霊魂もいかなる身体にも宿りうる(75)。死によって身体より分離浄められた後、上界へ帰る。再び身体を求め、幾度も生まれ変わる。輪廻。「この輪廻の苦しみに対して救いの道を授けるのがピュタゴラスの宗教運動の目的」「浄めの儀式」「ピュタゴラス的生活法」(76)
・「音楽と学問」「数学」という「精神的教養を尊重し奨励した傾向と」「オルフィク教と共通なる比較的原始的なる宗教的思想及び活動との間には、いかなる関係が存在したか」(76)

「種々の事実を綜合した考えれば」「ピュタゴラスは音楽と学問とを霊魂の浄え」「の手段と見なしたと解するのが最も当を得たものであろう」、「一種の伝染的精神病」、「魂を浄める手段として音楽を見るということはギリシアにおいてはこの宗教療法に源を発したらしい」(77)
・「共通の諸要素に関しては、前者が与えた者後者が受けた者であったという結論」、「ピュタゴラスは、オルフィク教において特色ある一宗教団体としての組織を見た当時の新しき参加し、文化意識の要求を充たすことによって、重要な点において、それを深め又高めたのである」(78)
・「学問を人生の価値ある内容として尊重すること」「自覚された主義としてのこの態度」、「ピュタゴラスにおいてはじめて見る」、「プラトンの先駆」、しかし「ピュタゴラス及び其の徒においては、なお甚だ不完全なる初歩的なる試み」(78)、「数学の基礎の上に建設された彼らの哲学的世界観と、オルフィク教より受け継いだ宗教思想とはついに何らの内容的連絡をも遂げ得なかった」(78-79)、「相並び存した」(79)

3.思想内容
大体において根本思想はすでにピュタゴラス自身に属した。
・「哲学の根本原理」「万物は数なり」。
「音の高低に応じて弦の長さが一定の数の比例に言い表しうる関係に立つことを、認識した最初の人」(79)
・「アリストテレスに従えば」「ピュタゴラス学徒が万物の数に対する関係を「象る」」「「真似る」」「などの語にて言い表したこと」
「法則としての意義は万物は数であるとの説に含まれる」、「数に従う事物の合法性の観察」、「ミレトス派の提出した「万物の本質は何ぞ」の問いは、ピュタゴラス学徒いおいて「数」という答えを得たと解すべきである」(80)
・「数を奇数的と偶数的との両要素より成るものと考え、更にこれらを有限者」「と無限者」「との二と同一視し、前者を完全なるもの後者を不完全なるものと評価し」「相反対するこれら両者よりして万物を導き出し説明しようと試みた」(80-81)。
「反対の原理の合一としての世界は根底において調和であること」
・「初期のピュタゴラス学徒」「無限者は空虚」「無際限に広がる物質殊に空気」、「この「無限者」が何らかの仕方によって「限界」によって限定されることによってひとつひとつの数え得べき点が生じ、かかる不連続なる実体の集合によって世界は成り立つ」、「かくの如きが」「ピュタゴラス派の宇宙論の最も原始的な形」(81)
・「数の如き形式的思想的なるものを、感覚的物質的なる万物の実体、一種の原的物質と見なした」、「数は空虚に由りて隔てられたる物的なる点の集合」、「アリストテレスは、彼らの「一」は大きさを有するもの」「と解した」(81)、「古代の表記法」「形無きものの「ある」を知るに困難を感じた時代の産物としては決して怪しむに足らない」、「万物の根源として完全なる実在を意味した「無限者」が」「反対に不完全者と同一視されるに至ったことは、希臘人らしい考え方感じ方を甚だ鮮やかに表したもの」(82)

4.まとめ
「ピュタゴラス学徒の数の説は、宗教とは直接の関係あるものではなかった」、「理想主義の萌芽を宿したものとして従ってプラトンのイデア論の先駆をなしなものとして、宗教形而上学の歴史において看過し難き位置を占める」(82)
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR