京都大学基督教学会・第九回研究発表会の報告

 昨日、京都大学基督教学会・第九回研究発表会が、京都大学文学部(第六講義室)にて、開催された。研究発表会では、お二人の方の研究発表が行われ、40名程度の参加者であった。その後午後5時30分から、場所を移動し、懇親会が行われたが、そちらは20名ほどの参加者であったろうか。12月といっても、年々忙しくなり、ほかの学会・催し・研究会などとかち合わない日程を組むことが難しくなってきているが、寒い中、お集まりいただいた方々に感謝したい。この京都基督教学会も他の学会同様に、学術大会(研究発表会)開催と学会誌刊行という二つの活動を中心に運営されているが、学会を支えるのが会員の意識であることを考えれば、学術大会が重要な意味をもっていることが実感される。

 さて、研究発表は以下に示すとおりであるが、それぞれ充実した内容であり、聞く方も知的満足を得ることができなのではないだろうか。

・上原潔(京都大学大学院博士後期課程)
 「前期ハイデッガー思想とキリスト教─研究方法の紹介とともに─」

 来年3月で、大学院博士後期課程を指導認定退学予定の上原さんによる、博士論文の構想とその一端を示す研究発表であったが、博士論文の問題設定・意図、そして現時点の研究状況が明確に示された。もちろん、かなり大きな研究構想であり、この構想のままで完成に至るかは今後の研究の進展次第であるが、ハイデッガー研究として、またキリスト教思想研究として、魅力的な論文となることが期待できるであろう。発表後の質疑では、「宗教的なもの」というキーワードをめぐり議論が行われたが、ハイデッガー自身における「宗教」「宗教的生」「宗教的意識」といった表現の意味内容の明確化と共に、解釈者が「宗教」をいかなる意味で使用するのかということが、問われることになる。ここに一つの問題点があるのは確かである。問われるべき論点は多岐にわたるが、博士論文(課程)という比較的限られた大きさの論文で何をどの程度まで掘り下げて議論できるかが、ポイントとなる。
 

・原島正(東洋英和女学院大学名誉教授)
「内村鑑三における『と』の研究」

 キリスト教学研究室の先輩であり、内村研究を中心として日本のキリスト教思想について活発な研究を行ってこられた原島先生の今後の研究の展開を展望した研究発表であった(合わせて、これまでの研究についても自己紹介的に説明がなされた)。思想における「と」の問題が、内村において、様々な問題設定、問題の位相で確認できること、そこに内村の思想的特徴が見られることが示され、その上で仏教的な「即」との対比にも話は及んだ。発表後の質疑では、この「と」と「即」との対比をめぐって議論が行われたが、わたくしの個人としては、思想あるいは宗教思想の基本構造として「と」を位置づける共に、特にキリスト教思想の中でこの問題を追及することによって、内村がキリスト教思想の中で占める位置を明らかにする、つまり、キリスト教思想(史)における内村の解明という研究の可能性について興味をそそられた。内村に近い時代では、この「と」の思想構造は、それに類似したシュライアマハーの楕円と、またそれと対比すべきバルトの円にも読み取ることが可能であり、そもそも、キリスト教思想史全体の貫く古典的なテーマである、「学知と信仰」「理性と啓示」などは、すべてこの「と」をめぐったものであり、この「と」に規定された終末以前=歴史内的状況とそして終末における「一元的」状況(神が一切において一切となる)との「と」が問題だったはずである。
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