アメリカ史の文脈から政治とキリスト教の問題へ

 政治・国家とキリスト教という問題は、理論的かつ歴史的なアプローチを必要とする研究テーマである。それだけに広い視野と緻密な論理的思考とが要求される。今回取り上げるのは、その点からきわめて貴重な研究成果である。著者は余りか・キリスト教史、特に神学思想史を専門にしている方であり、その分野では重要な業績をすでに公刊されているが、近年、本ブログにも緊密な関係のある、政治思想に関わるキリスト教思想(契約思想、寛容論、良心論、政教分離、信教の自由あるいは民主主義)をアメリカ史の文脈で追求してきており、この文献はその成果と言える。
 12月は重要な研究成果の出版が続く時期の一つであるが、クリスマスの時期によきプレゼントをいただいたとの感がする。もちろん、内容的にすべてが同意できる議論というわけではないが(寛容論なども)、今後、本書を念頭に自分自身の研究を深めて行きたい。

森本あんり
『アメリカ的理念の身体──寛容と良心・政教分離・信教の自由をめぐる歴史的実験の軌跡』
創文社、2012年12月。

序章

第一部 寛容論と良心論──歴史的文脈と今日的射程
第一章 中世的寛容論から見た初期アメリカ社会の政治と宗教
  一 寛容論の今日的な混乱
二 教会契約と市民契約
三 中世的な寛容論
四 ニューイングランド的な不寛容論
五 寛容論の転換 
第二章 「誤れる良心」と「愚行権」──中世から近世への神学的系譜

一 宗教的寛容から近代の愚行権思想へ
二 中世の良心論
三 ピューリタンの良心論

第三章 「誤れる良心」と「偽れる良心」をどう扱うか──現代寛容論への問いかけ
一 問題と文脈の設定
二 ウィリアムズの「追放」処分
三 「迫害」の根拠
四 「誤れる良心」
五 「自分の良心に反して」
六 「誤れる良心」から「偽れる良心」へ
第四章 人はなぜ平等か──平等の根拠としての「良心の自由」

一 宗教的平等から社会的平等へ
二 「良心の自由」とアメリカ独立革命史
三 万人の平等へのまなざし


第二部 政教分離論──発展期の錯綜と現代の憲法理解
第五章 初期アメリカ社会における政教分離論の変容と成熟

一 プリマス植民地と公定教会制
二 スワンシーにおける寛容と政教分離
三 英本国の寛容政策とニューイングランド
四 税負担の公平と政教分離の理念
結 
第六章 ロジャー・ウィリアムズの孤独──規制原理としての分離主義と構成原理としての許容原理
一 政教分離の二原理
二 現代アメリカの政治哲学に見る二原理の展開
三 ロジャー・ウィリアムズに見る二原理の交錯
四 政治参加の自由とウィリアムズの孤独
第七章 さまよえる闘士──ロジャー・ウィリアムズ評価の変遷と今日の政教分離論
序 
一 ウィリアムズの同時代的な評価
二 独立革命期のウィリアムズ評価
三 二〇世紀におけるウィリアムズ評価

第八章 教会職と政治職──兼任の禁止と解禁の論理

一 聖俗両権分離の伝統的理解
二 植民地時代の理解と実態
三 旧世界との同時代的比較
四 建国後の州議会による禁止規定
五 連邦憲法と権利章典の規定
六 公職者の宗教的信念


第三部 信教の自由論──プロテスタント的な自由競争原理の帰結
第九章 プロテスタント的な大学理念の創設──初期ハーヴァードのリベラルアーツと神学教育
序 
一 設立の目的
二 カリキュラム内容の検討
三 大学院と専門学位
四 プロテスタント大学の理念

第一〇章 ジョナサン・エドワーズと「大覚醒」の研究史
一 リヴァイヴァリズムと信教の自由
二 エドワーズによる「誠実な報告」
三 ニューイングランド的な背景
四 研究史の変遷
五 錯綜する評価
六 総括
第一一章 反知性主義の伝統と大衆リヴァイヴァリズム──Harvardism, Yalism, Princetonismをぶっとばせ
序 
一 反知性主義の由来
二 第二の駆動力としてのビジネス精神
三 宗教とビジネスとの融合
四 ビリー・サンデーに見る宗教的道徳と世俗的成功との融合

第一二章 キリスト教の女性化と二〇世紀的反動としての男性化

一 女性化した一九世紀キリスト教
二 「筋肉質のキリスト教」
三 男性リヴァイヴァリズムと肉体性の肯定


終章

あとがき

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Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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