教皇退位

 昨日、教皇ベネディクト16世が、枢機卿会議で退位を表明したとのニュースが流れた。85歳の年齢による身体的衰弱がその理由とのことである(前教皇ヨハネ・パウロ2世が84歳での逝去であったことを考えれば、個人差はあるとしても、高齢であることは間違いない)。第2バチカン公会議で活躍した世代の教皇の退位であり、ローマ・カトリック教会の一つの時代の終わりというべきかもしれない。ベネディクト16世はラッツィンガー枢機卿時代より、解放の神学の陣営に対抗する保守派の代表と見なされ、最近のローマ・カトリック教会の動向(それをどう評価するかは別にして)をリードしてきた人物であることは疑いない。次期教皇がどのような人物になるかは、ローマ・カトリック教会という巨大な宗教組織の今後にとって決定的な意味をもつことになるだろう。

 ベネディクト16世の思想については、枢機卿時代の2004年1月19日に、ミュンヘンで行ったハーバーマスとの討論会における両者の講演が翻訳されている。しばしば言及される有名な講演である。

ユルゲン・ハーバーマス、ヨーゼフ・ラッツィンガー
『ポスト世俗化時代の哲学と宗教』
岩波書店、2007年。

まえがき(フロリアン・シュラー)

民主主義法治国家における政治以前の基盤(ユルゲン・ハーバーマス)
 1 世俗化された立憲国家の、実践理性を源泉とした基礎づけ
 2 国家公民の連帯はどのようにして再生産されうるのか
 3 社会的な紐帯が切れてしまうならば
  付論
 4 二重で相互補完的な学習過程としての世俗化
 5 信仰を持った市民と世俗化された市民がどのように交流したらよいのか

世界を統べているもの──自由な国家における政治以前の道徳的基盤(ヨーゼフ・ラッツィンガー)
 1 権力と法
 2 権力の新たな形態、その抑制に関する新たな問い
 3 法の前提──法-自然-理性
 4 異文化対話とその帰するところ
 5 結論

著者について
〈訳者解説〉 変貌するカトリック教会とディスクルス倫理(三島憲一)
訳者あとがき

 討論内容は公開されていないが、この二つの講演から、現代という時代における宗教と世俗をめぐる問題状況を知ることができる。啓蒙主義とカトリシズムという一つの対立軸を形成してきた両者は、ポスト世俗という精神状況の中で、何を共有しどこで相違しているのか。これは、ヨーロッパ的状況のことか、あるいは世界規模の動向か。日本人がもっとも苦手とする問題かもしれない。
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