思想史における民衆という問題(11)

 思想史から社会史・民衆史と議論を辿る中で、民衆をめぐる問題圏が浮かび上がり、さらに日本中世史を経て、ヨーロッパ中世史へたどりついた。前回紹介したように、現在中世研究はこれまでの研究を乗り越える仕方で大きく展開しつつある。社会史・民衆史はその一翼を担うものであり、その研究成果は日本にも翻訳などを通じて紹介されている。たとえば、アラン・コルバンやフィリップ・アリエスの一連の研究、そして、わたくしの手元にもあるフェルナン・ブローデルの大著『地中海(フェリベ二世下の地中海と地中海世界)』(藤原書店)など。こうした中世研究は文学研究なども加えつつ、日本人による優れた中世研究を生み出すに至っている。こうした研究動向は、修道院研究などにおいてキリスト教史とも関連を有しているものの、日本における中世キリスト教史研究は今後の研究課題として残されていると言わねばならない。

 たとえば、増田四郎らによる中世社会史とキリスト教史とはどのような生産的な関連づけが可能だろうか。キリスト教史が民衆における宗教性の現実まで取り下げられるとき、たとえば、宗教改革などについては、従来の学説を乗り越える展開が可能なように思われる。次の文献は増田四郎一般向け講演をもとにしたものであり、こうした研究の雰囲気を知るには適当かもしれない。

増田四郎
『ヨーロッパ中世の社会史』
岩波書店、1985年。

第一講 中世社会史への誘い
  1 私の歴史研究
  2 西ヨーロッパの優越とその動揺
  3 西ヨーロッパ基層社会の構造的特色
  4 私の社会史的把握のねらい

第二講 民族大移動期の世界史的意義(四─八世紀)
  1 東洋と西洋──宗教・民族・国家
  2 ゲルマン民族移動の実態
  3 部族国家の在り方
  4 フランク王国の構造

第三講 西ヨーロッパ的生産様式の形成と普及(八─十一世紀)
  1 初期中世の集落形態
  2 原初村落の集村化
  3 村落団体と荘園支配
  4 特産物生産地域の顕現
  5 東ヨーロッパ農村との比較

第四講 西ヨーロッパ中世都市の特色(十一─十三世紀)
  1 いわゆる「商業の復活」現象の背景──市場定住
  2 領主支配の都市から市民自治の都市へ
  3 都市および都市住民数からみた東西ヨーロッパの比較
  4 社会数段としての中世都市の特色
  5 市民構成の純粋度からみた南欧と北欧

第五講 中世西ヨーロッパ社会に共通した特質(十三─十六世紀)
  1 社会経済発展の重心の転移とその中核地帯
  2 いわゆる「中世的世界経済」と「都市経済」
  3 北欧商業圏と地中海交易圏
  4 十五、六世紀にみる交易体制の大転換

第六講 国家権力の質的変化について
  1 人的結合国家から領域支配国家へ
  2 各国封建国家の相違
  3 農民一揆・農民戦争の背後にあるもの
  4 世界帝国・国民国家・小国の原理とその並存
  5 結び──国家や社会集団をグローバルに比較する座標軸への試論

参考文献
あとがき   
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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