古代キリスト教思想研究

 京都大学キリスト教学専修は、伝統的にキリスト教古代の思想研究(教父学)に関して、優れた研究者を輩出してきた。今回紹介したいのは、こうした古代キリスト教思想研究の分野において、キリスト教学専修出身者である津田謙治さん(現在、西南学院大学准教授)によって刊行された研究書である。これは、あとがきにもあるように、津田さんが、2007年度に京都大学大学院文学研究科に提出し博士学位を授与された学位論文に加筆修正を加えたものである。この学位論文に関わった一人としてこの著書の刊行を喜びたい。

津田謙治
『マルキオン思想の多元論的構造──プトレマイオスおよびヌメニオスの思想との比較において』
一麦出版社、2013年2月。

序論
 1.「研究の課題」
 2.「研究史」
 3.「研究の方法」
 4.「資料」

第一章 「神的原理の多重的構造」
 I.「マルキオン」
  1.「二神論」
  2.「他資料との比較」
 II.「プトレマイオス」
  1.「三原理論」
  2.「他資料との比較」
 III.「ヌメニオス」
  1.「三つの神」
  2.「他資料との比較」
 IV.「まとめ」

第二章 「善の神、至高神、第一の神」
 I.「マルキオン」
  1.「至高神」
  2.「キリスト」
 II.「プトレマイオス」
  1.「最も善き神」
  2.「救済者」
 III.「ヌメニオス」
  1.「単一なる存在としての第一の神」
  2.「善そのものおよび第一の知性としての存在」
  3.「第一の神と世界の生成」
 IV.「三者の至高神概念に関する比較考察」
  1.「至高神の善」
  2.「至高神の摂理」
  3.「至高神の知られざる神性」
 V.「至高新概念のまとめ」 

第三章 「創造神、第二(第三)の神」
 I.「マルキオン」
  1.「創造神」
  2.「創造神のキリスト」
 II.「プトレマイオス」
  1.「律法の神と創造神」
  2.「中間者」
  3.「義の神」
 III.「ヌメニオス」
  1.「第二の神」
  2.「第三の神」
 IV.「三者の創造神概念に関する比較考察」
  1.「創造神の善」
  2.「創造神の義」
  3.「創造神と律法」
 V.「創造神概念のまとめ」

第四章 「質料」
 I.「マルキオン」
  1.「質料からの創造」
  2.「質料の悪」
 II.「プトレマイオス」
  1.「質料的概念」
  2.「質料と悪魔」
 III.「ヌメニオス」
  1.「質料の諸性質」
  2.「質料の悪」
 IV.「三者の質料概念に関する比較考察」
  1.「質料の永遠性」
  2.「質料の悪」
 V.「質料概念のまとめ」

第五章 「比較考察」
 1.「概観」
 2.「至高神(第一の神)」と「創造神(第二の神)」の関係
 3.「至高神(第一の神)」と「質料」の関係
 4.「創造神(第二の神および第三の神)」と「質料」の関係
 5.「三つの神的原理間の総体的関係」
 6.「議論の総括」

結論 
 「結語」

「引用・参考文献一覧」
「人名索引」
「事項索引」

あとがき

 この著書であつかわれた2世紀のキリスト教思想は、先行する1世紀(聖書文献、使徒教父)や続く3世紀以降と比較しても格段と研究が困難な時代であり(資料的な問題、そして正統キリスト教の生成過程という時代の問題)、本書はこの困難な問題に正面から取り組んだ力作であり、オリジナルな研究成果と言える。津田さんの今後の研究のさらなる展開が期待される。

 近年、キリスト教学専修においても、課程博士学位の取得者が続くようになり、若手研究者には博士学位が不可欠になりつつある。しかし、この博士学位は本来学位論文の出版を伴うものであり、その意味では、出版刊行によって一区切りというべきかもしれない。従来は、国立国会図書館と大学附属図書館に製本論文を収めることによって、出版に代えるという方式がとられてきたが(出版という条件はあまり厳密には適用されてこなかった)、文科省の省令の変更により、この4月からはインターネットによる公開が原則となり、京都大学でも10月からの実施に向けた作業が進められつつある。インターネット公開となった場合、さまざまな問題が生じる可能性があるが、博士学位を目指す者にはこうした点に対応できることが求められる。
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 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

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