近代化と宗教

 近代化(西欧)はキリスト教との密接な関連性において生成したものであるが、それはキリスト教に大きな変容を及ぼし、その影響はグローバルな規模に及んでいる。アジアの宗教状況を論じる場合も、この近代化はきわめて重要な研究テーマとなる。こうした近代化との関連で日本仏教を見るとき、さまざまな問題が浮かび上がってくる。明治5年の太政官布告「肉食妻帯勝手たるべし」を多くの教団が大きな抵抗もなく受け入れたことは、現在、東南アジアなどの仏教との比較で「日本的」と特徴付けられる日本仏教の成立に大きく作用することになると言われる。その背後には、日本仏教が国家仏教としての基本的な性格を有していたこと、また近世の真宗教団の成立の意義など、さまざまな問題が存在している。肉食妻帯という問題は、宗教をその基盤から考える上で、特にキリスト教をはじめとした宗教相互の比較研究にとっても興味深いテーマである。キリスト教にとって、肉食とは何かとは旧約聖書における肉食の生成に遡る問いであり、妻帯・結婚・性も現実の問いである。こうした点で、次の文献がきわめて重要なものと思われる。

中村生雄
『肉食妻帯考──日本仏教の発生』
青土社、2011年。

第I部 肉食妻帯と日本仏教
 第一章 女犯肉食と肉食妻帯の距離
 第二章 肉食妻帯
 第三章 〈日本仏教〉の発生──肉食をめぐる禁忌の形成に関連して
 第四章 「仏教の日本化」をめぐって

第II部 肉食妻帯と近代仏教
 第一章 「おのづから」と「無戒」──「肉食妻帯」に見る日本人の宗教意識
 第二章 「肉食妻帯」問題から見た日本仏教
 第三章 日本の仏教にとって「肉食妻帯」とは何だったのか

第III部 殺生と肉食
 第一章 殺生罪業観と草木成仏思想
 第二章 東国教団における「悪人」たち
 第三章 「血食」とカニバリズム──折口信夫の貪婪と快楽
 第四章 不殺生戒と動物供犠

あとがきにかえて(三浦佑之)
初出一覧

2010逝去された中村生雄氏の遺稿集である。わたくしは、以前から『日本の神と王権』(法蔵館、1994年)を講義などで取り上げてきたが、この遺稿集からも多くの示唆を受けた。
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