精神病院、介護、現実のなかで

 現代社会を「学校化」「病院化」という仕方で分析したのは、イヴァン・イリッチであったが、こうした管理・監視を基本構造とした社会は着実に進行しつつある。この事態がもっとも鮮明に観察できる領域、それが精神病院あるいは介護の現場であり、これは日本社会の近未来あるいは現在そのものかもしれない。宗教はこの現実のどこに位置しているのか。
 こうした問題を考える上で、次の潜入ルポは貴重な報告と言える。

柳田勝英
『潜入 閉鎖病棟──「安心・安全」監視社会の精神病院』
現代書館、2012年。

第一部 潜入 閉鎖病棟
 病棟図
 プロローグ
第一章 茫々たる意識の中で
第二章 保護室の外へ
第三章 病棟の一日
第四章 シーシュポスの神話
第五章 与謝野さんとの出会い
第六章 合法的虐待
第七章 病棟内の経済
第八章 理解されない患者の心
第九章 逆転
第十章 ちょっとした運命
 エピローグ

第二部 精神病院と特別養護老人ホームを結ぶ線
第一章 当事者のより近くへ
第二章 医療観察法、二〇一〇年
第三章 精神病院と当区別養護老人ホームを結ぶ線

第三部 もう一つの「精神病院」

初出掲載・参考文献
あとがき


「長期入院患者。それは結局、家族に見捨てられた人たちだったのだ」(86)。とすれば、家族が崩壊した場合、何が長期入院(脱出不能)から人間を守ってくれるのか。はなはだ心許ない現実がある。また、精神障害者の再犯率が一般犯罪者よりも低いという事実をよく考えるべきである(135-136)。わたしたちは、あまりにも「現実」を知らなすぎてはいないか。本書の著者が推薦している文献の一つに、小笠原和彦『出口のない家──警備員が見た特別介護老人ホームの夜と昼』(現代書館、2006年)があるが、「出口のない家」とは入居者の言葉の中に登場する(180)。「あとがき」には、「とかく若者への風当たりは強いが、福祉の世界ではあてはまらない。国は早急に手当を厚くして、若者の流出をふせがないと、介護職員は外国人になってしまう。それを最後にいっておきたい」(同書、236)とある。


なお、精神病・精神病院の在り方を日本の近代化の歴史的文脈で理解したい人は、次の文献も参照。こちらは、より宗教学的である。

兵頭晶子
『精神病の日本近代──憑く心身から病む心身へ』
青弓社、2008年。
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