木下尚江研究

 木下尚江は、近代日本のキリスト教思想家として、また社会主義や文学など、多面的な文脈で問題となる人物であるが、これまでそれに相応しい評価がなされてきたとは必ずしも言えないように思われる。
 今回紹介する文献は、韓国からの留学生が、東京大学大学院総合文化研究科に提出の博士論文に若干の修正を行ったものであり、博士の学位論文に相応しく問題設定・構成が手堅く、また先行・関連研究の検討などがしっかり行われ、本格的な木下尚江研究と言える。近年、日本のキリスト教思想研究の分野では、韓国からの留学生の優れた研究が見られるが、本書もそうした動向の一環と言えるかもしれない。日韓の交流は、着実に広がり深まりつつあるというべきかもしれない。

鄭 玹汀
『天皇制国家と女性──日本キリスト教史における木下尚江』
教文館、2013年2月。

(以下、目次を紹介するが、博士論文にふさわしく、節以下の区分を含む細かな構成になっている。目次の紹介は、第一章以外は、基本的には章レベルにとどめたい。詳細は本書をご覧いただきたい。)

凡例

序章 本研究の視覚と課題
 一 明治キリスト教史における二つの問題──天皇制国家と女性
 二 明治キリスト教における木下尚江の位置

第一部 明治中期のキリスト教界と木下尚江
 第一章 明治中期におけるキリスト者の「男女関係」論とその変遷
  はじめに
  第一節 社会改良期における男女関係論
  第二節 転換期における男女関係論
  第三節 国家主義高揚期における男女関係論の変質──「日本の花嫁事件」を中心に
    一 田村直臣の『日本の花嫁』とキリスト教界
    二 『日本の花嫁』──「恋愛」論の先駆と家父長制批判
    三 二つの婦人観──『日本の花嫁』と『貞操美談 路得記』
  おわりに

 第二章 松本時代における木下尚江──キリスト教的社会改良運動と女性論

第二部 明治後期におけるキリスト教界と国家
 第三章 巌本善治の女子教育論──「帝国」と「女学」
 第四章 植村正久の「武士道」論──日清・日露戦争とキリスト者
 第五章 海老名弾正の「忠君敬神」思想──キリスト教による「国体」の弁証

第三部 明治後期の木下尚江──女性と国家をめぐって
 第六章 木下尚江における「廃娼」の思想──虐げられた者の権利とその回復をめざして
 第七章 明治期キリスト教界と木下尚江──「野生の信徒」の革命
 第八章 木下尚江と日本基督教婦人矯風会──女性と国家をめぐって

終章 まとめと展望
 第一節 明治日本における木下尚江の思想と運動の意義
 第二節 今後の研究課題

文献目録
あとがき

事項索引
人名索引

 やはり焦点は天皇制との関わりにあるということだろうか。最近の日本における改憲をめざす政治動向や政治家の無知な妄言という状況における木下尚江の思想的意義を考えるべきかもしれない。

 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

LogosOffice

Author:LogosOffice
 これまで本ブログは、2013年度より2015年度まで科学研究費の交付(代表者・芦名定道)を受けて行われた研究を中心に、キリスト教思想研究に関わる情報を発信してきました。しかし、2016年度からの新しい研究プロジェクトに関連した事柄は、主に別のブログで取り扱うことにし、本ブログでは、これ以外の記事について継続的に内容を更新します(新しい科研に関するものも、記事の継続性の観点から一部はこちらでも扱います)。
 なお、本ブログにもしばしばコメントが寄せられますが、多忙のため、原則として応答その他の取り扱いはいたしません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR